TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 光 波 ー

第六話「光波」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

メトロポリスより遠く離れた場所に広がるアンダーグラウンドと呼ばれる地。クラウド世界の長い歴史の中、数多の争いにより荒廃し見捨てられ荒れ果てた大地。無法者がのさばるクラウド世界の暗部とも言えるその地に点在する廃墟群、その中のひとつに大きなコロシアム状の建造物があった。メガトロンがディセプティコン発起の際に演説の舞台として選んだこの廃墟・・・その始まりの場所とも言える建物に今多くのディセプティコン達が集結しつつあった。
暗雲うずまく空を飛ぶ巨大な輸送シャトル、メトロポリスへの大規模な襲撃作戦を終えたアストロトレインがコロシアムへとゆっくり着陸する。ハッチが開き中から降りてくるディセプティコン達、その中には暴れたりなさそうに不満な表情を浮かべるデッドロックや、スカイワープに肩を借りたスタースクリームの姿もあった。
「へへ、懐かしきかなアンダーグラウンド。こんなクソみてえなところでもあの刑務所よりは遥かにマシだな。」
エネルギーが少なくふらついた状態ではあるが、スタースクリームは上機嫌であった。背後でロボットモードへトランスフォームするアストロトレインにも声をかける。
「ご苦労。前はいけ好かない奴だと思っていたが、同じトリプルチェンジャーになった今となってはお前さんにも親近感がわくぜ。」
アストロトレインは無言のままスタースクリームの肩を抱える。重い荷物から解放されたスカイワープの元にサンダークラッカーが近寄ってきた。
「まったくいい気なもんだぜ。ショックウェーブはなんだってこんな苦労してまであのバカを連れ戻したんだ?」
「さあな、だがメガトロン様不在の今俺たちはショックウェーブに従うしかない。何かいい考えがあるんだろう。」
二人がそんな会話をしていると、単独で撤退してきたショックウェーブがコロシアムへと到着した。着陸しヘリからロボットモードへと変形するも、そのボディは度重なる戦闘によりだいぶダメージを負っているようであった。その姿を見つけたスタースクリームが横柄な態度で声をかける。
「ショックウェーブ、ご苦労だったな。ニューリーダーの俺様が無事に帰還したぜ。」
「来・・・い・・・。」
ショックウェーブは低く掠れたような声でつぶやく。いつも以上の愛想の無さにスタースクリームが不満に思うとアストロトレインがフォローをいれる。
「ショックウェーブは今回の作戦のためにかなりのダメージを負った。一度死にかけた意識を無理矢理覚醒させるためサーキットスピーダーも使用したらしい。その副作用で発声回路にも障害を負ったようだ。」
スタースクリームは驚く、サーキットスピーダーといえば一種の覚醒剤のようなものであり、強力な分そのボディに大きな負担をかけ確実に命を削るトランスフォーマーにとって非常に危険な物質。それを使ってまで自分の救出作戦を敢行するとは。
「・・・ショックウェーブよお、お前のこと俺様は誤解していたみてえだ・・・。」
柄にもなく感傷的な気分になるスタースクリーム、リーダーとしてそれだけの期待に応えねばと内心決意を固める。そのままスタースクリームはアストロトレインと共にショックウェーブに促されるまま、コロシアム中央から伸びる地下への階段を下りていく。
「なんだ?何か俺様に見せたいものでもあるのか?その前にエネルギーを補充してもらいたいんだが…。」
スタースクリームの言葉だけが響き渡る暗くて長い地下道を三人は進んでいき、その先の行き詰まった場所にある異様な部屋へとたどり着く。中に入るとさまざまな機械が設置してあり、部屋の中央には広いスペースが開けられていた。
「入れ・・・。」
部屋に設置された機械の一部、トランスフォーマーが一人入れそうなサイズのカプセルをショックウェーブが指す。機械につながれたそれは物々しい雰囲気を発していた。
「な・・・なんだ?エネルギー補給装置にしては見たこともない形だな?」
戸惑うスタースクリームであったが、背後のアストロトレインに突如蹴り飛ばされ無理やりカプセルの中に入れられてしまう。即座に蓋が閉められ閉じ込められたスタースクリームは焦る。
「お、おい!何しやがるんだ!?」
「ゲート・・・起動・・・。」
ショックウェーブのぞっとするような冷たい声にスタースクリームは今までの幻想を払われるような感覚を覚え、同時に全て理解した。これはディメンションゲート発生装置であり、奴はSARAの力をもつ自分のボディを通してそれに必要なエネルギーを増幅させようとしているのだ。ゲートを開くほどの大量のエネルギーにさらされる・・・それが自分の身にどれほどの苦痛を浴びせるのか、彼は本能的に感じ取った。
「お、おい・・・冗談だろ?死んじまうよ!アストロトレイン!ぼさっとしてないで助けてくれ!」
オロオロとカプセルの中で慌てふためくスタースクリームにアストロトレインは冷酷な態度で言い放つ。
「そうやって命を乞うブリッツウイングを貴様は助けたのか?スタースクリーム。」
その言葉にスタースクリームは愕然とした、同じトリプルチェンジャーであり相棒でもあったブリッツウイングを自分が手にかけたことをアストロトレインは知っていたのだ・・・。
「あ…あれは…仕方なかったんだ・・・!」
その言い訳を待たず、ショックウェーブは速やかに起動スイッチを押す。
「ぎゃあああああっ!?」
激しいエネルギーが体内を駆け巡りスタースクリームの絶叫が轟く。カプセルの中をエネルギーが循環し、スタースクリームの体が見えなくなるほどの激しい光に包まれる。その絶叫は地上にいるディセプティコン達の耳にも届き、彼らはえもいわれぬ恐怖感を感じた。
「い…今の声はスタースクリーム・・・?や、やっぱりあいつもショックウェーブにとって利用するだけのコマだったってことかよ・・・。」
スカイワープは地下で何が起きているのか考えないようにして、もはやショックウェーブに従うしか自分達が生き延びる術はないことを改めて痛感する。狂犬と呼ばれたデッドロックさえも先ほどの絶叫には言葉を失い、皆が改めてショックウェーブの狂気を垣間見、その非情さと恐ろしさを思い知らされた。
すでに意識を失いほぼ機械の一部とされてしまったようなスタースクリームのことなど気にもせず、ショックウェーブは眈々と操作を続けている。
「マシンは…急ごしらえ・・・ゲート・・・開くまで・・・時間がかかる・・・。」
「ショックウェーブ、レーザービーク達ヨリ報告ガある。」
この光景を前にしても普段となんら変わらぬ様子のサウンドウェーブが入室し、ショックウェーブへと耳打ちする。
「来るか・・・オートボット・・・。」

少し前・・・オートボット守備隊基地ではアンダーグラウンドのディセプティコン本拠地へと向け討伐隊が編成され出発せんとするところであった。スタースクリームから感じられるSARAのエネルギーを頼りに導き出された場所へと向かうは、オプティマスやホットロディマス、ブローンをはじめとしたオートボットの精鋭達。決戦を前に意気込む彼らの元へSARAが駆け寄る。
「オプティマス!ロディマス!私も一緒に、連れて行って!」
「バカを言うなSARA、どんな危険があるかもわからない、連れていけるわけがないだろう。」
断ろうとするホットロディマスであったが、意外なことにオプティマスはその要望を受け入れようとする。
「ロディマス、もはやメトロポリスも安全とは言い難い。我々が出た隙に再び攻め込まれる可能性もある。それならば、いっそ我々と共にいた方が彼女の身は守れるのではないか?それに…連中がディメンションゲートを開くというなら、彼女の力が助けになるかもしれない。」
オプティマスの提案にホットロディマスはしばし黙るも、渋々納得した様子でSARAの要望を受け入れた。
「よし、それでは出撃だ。オートボット!トランスフォーム!」
オプティマスの力強い号令のもと、各員一斉にビークルモードへと姿を変えアンダーグラウンド目指し発進する。大地を揺るがし進撃するオートボット戦士達、メトロポリスの守備と指揮権を任されたウルトラマグナスはその姿を見送った。
「司令官、どうかご無事で。ロディマス・・・任せたぞ・・・!」

そして現在、アンダーグラウンドにあるコロシアム廃墟は、今まさにオートボットとディセプティコンによる最終決戦の舞台となっていた。 「くそ!オートボット共めここまで嗅ぎつけて来るとは!」
「むざむざ殺されてたまるか!迎え撃て!」
スカイワープとサンダークラッカーが荒くれ者達を率いてオートボットへと突撃する、彼らもここで勝利せねば後がないことをよく理解していた。
「かかって来やがれボッツ!皆殺しにしてやるゼ!」
反面狂喜乱舞で銃を乱射し戦場を駆け回るデッドロック、その前にオートボットのベテラン戦士アイアンハイドが立ちふさがる。
「ディセプティコンの小僧!今度は逃がさんぞ!」
「またあんたかオッサン、それはこっちのセリフだゼ!もう退却命令はねえ、その体を蜂の巣にしてやる!」
乱戦の中、襲い来るディセプティコン達を退けながらショックウェーブの姿を探すホットロディマス。すると傍のSARAが何かに気付きコロシアムの中央を指さす、その先には朽ち果てた舞台のような場所があり、地下へと続く入り口のようなものが見えた。だがそれに気を取られた瞬間、ディセプティコン数名がホットロディマスへ一斉に銃撃を放つ。
「ロディマス!危ないー!」
するとSARAから強力な光が放たれ、それはまるでバリアのようにSARAを中心に周囲を覆いディセプティコン達の放ったビーム弾をすべてかき消した。MF時空で得た超魂パワー、そしてBW時空で得た膨大なエネルゴンを利用することによりSARAはその身を守る術を身につけ、使いこなせるようになっていたのだ。
「お…おいおい、いつの間にそんな芸当ができるようになったんだSARAよお!」
あっけにとられるディセプティコンを蹴散らしたブローンが驚きながらも楽しげな声をあげる。ホットロディマスも同じく驚いたが、気を取り直しブローンへと声をかける。
「ブローン、SARAを頼む。俺は司令官と共に奴を…ショックウェーブを止めに行く。」
オプティマスと目配せをして、二人の赤い戦士はビークルモードへと変形し地下への入口へと潜り込んで行った。SARAと共にそれを見送るブローン、その体にふと影が落ちる。刹那ブローンは右手を鉄球モードへと切り替え、背後から飛びかかってくる影へ向けカウンターパンチを繰り出した。その一撃がクリーンヒットし、たまらず吹き飛ばされるもすぐに起き上がり唸り声をあげるのはディセプティコンの恐竜型殺戮マシーンダイノボットであった。
「毎回ワンパターンで襲って来やがって、頭の悪い獣野郎め。いい加減お前さんとの決着もつけてやる!」
SARAを背後へかばいつつ、ブローンは身構えた。

暗い地下道を進み、オプティマスとホットロディマスは行き詰った先に閉ざされた扉を発見する。
「SARAを奪還しようと初めてアンダーグラウンドのディセプティコン基地へと忍び込んだ時のことを思い出すなロディマス。」
「ええ、・・・ですが今度は不甲斐ない姿は見せません。必ず連中の企みを止めてみせます!」
ホットロディマスの頼もしい言葉にオプティマスも力強く頷き、二人が同時に勢いよく扉を開ける。すると中から光弾が何発も放たれ、その攻撃を回避しながら部屋の中に転がり込むオプティマス達。目を上げると左手のブラスターを構えたショックウェーブとサウンドウェーブが並び立ち、その背後には今にも開かれんとするディメンションゲートが見えた。
「ショックウェーブ、貴様の企みはもうここまでだ。おとなしく・・・」
ホットロディマスの言葉を待たず再び光弾を連射するショックウェーブ、もはや語ることはないとばかりに非情な態度で侵入者を処分しようとする。それに従うようにサウンドウェーブも胸部からデータディスク部隊をイジェクト、飛び出してきたレーザービーク、ラヴェッジ、フレンジーらへ向けオプティマスは銃撃を放ち威嚇した。
「ロディマス、サウンドウェーブと小さい連中は私が引き受ける、お前はなんとしてもショックウェーブを止めるんだ!」
オプティマスがそう言うと同時に部屋の中央の空間に目を覆いたくなるほどの閃光が瞬き、時空移動の入口…ディメンションゲートがついに開かれてしまった。ショックウェーブはゲートへ近づこうとするも、何かに気づきスタースクリームが閉じ込められているディメンションゲート発生装置の前へと素早く移動した。ホットロディマスの銃口が発生装置へと向けられていたのだ。
「俺達を無視して時空移動することはできないぜショックウェーブ、どちらかが倒れない限り戦いは終わらない。」
ショックウェーブの瞳が鈍く光り、ホットロディマスへ向け殺気が放たれる。両者の因縁もついにここに最終局面を迎えたのだ。

地上のコロシアムではオートボット対ディセプティコンの激戦がより激しさを増し続いていた。
デッドロックは目の前の赤いオートボット戦士アイアンハイドに対し苛つきを隠せずにいた。自分を苦戦させる強者であることもそうだが、アイアンハイドの呼びかけが彼の神経をざわつかせていた。
「小僧!一体なぜそこまでオートボットへ殺意を向ける?一見ただの快楽殺戮のように振舞ってはいるが、何か深い怨恨を感じるぞ!」
ベテラン戦士のアイアンハイドには、デッドロックとの戦いの中何か感じられるものがあった。
「うるせえ!お前には関係ないゼ!とっとと俺に殺されろ!」
デッドロックが銃撃を加える中、アイアンハイドはそれを回避しながら一気に間合いをつめデッドロックに顔を近づける。
「お前のような実力ある若者がこんなチンピラまがいの状態でいるのは勿体無いぞ・・・。」
その言葉にデッドロックは一瞬戸惑いの表情を浮かべるも、次の瞬間その顔へとアイアンハイドの鉄拳が叩き込まれた。オイルを散らしうめき声を上げうずくまるデッドロック。
「俺の拳で目を覚まさせてやる、立て!小僧!」

「うおおっ!離せこいつ!」
ブローンが苦痛に顔をゆがめながら腕を振り回す、その腕にはダイノボットがガッチリと牙を食い込ませていた。一瞬ブローンがバランスを崩すとダイノボットは力任せに押し倒し、そのままブローンの顔に食らいつこうとする。ブローンはその顎を両手で必死に抑える。
「やめて!」
咄嗟に叫んだSARAの声、本来の戦場ならただ虚しく響くだけであったろうその静止を願う声であったが、なんとダイノボットはその声に反応しSARAへと注意を向ける。SARAもその反応に気づき、ゆっくりとブローンにまたがるダイノボットへと近づいた。
「SARA!こいつは危険だ離れ・・・?」
なんとSARAはダイノボットへとそのか細い腕を伸ばしてきた、危ないと叫びそうになったブローンであったが、その言葉を飲み込み呆気にとられる。なんとダイノボットはSARAの匂いを嗅いだと思うと、そのまま鼻先をさすられくすぐったそうにじゃれはじめた。
「こいつは…驚いた。いったいいつの間に猛獣使いになったんだSARA?」
時空世界を回るうちにSARAは多くの命と触れ合い、それらを慈しむ心を芽生えさせ始めていた。SARAはダイノボットの闘争本能の奥に隠された生物としての純粋な心に気づき、ダイノボットもまたSARAの暖かさを感じ取ったのであった。
「ナンパの、おかげ。」
「・・・は?」
間の抜けた声を出してしまったブローンの上からダイノボットが静かに降り、まるで子犬が飼い主にじゃれるようにSARAへと顔をすりつけてくる。だがその時首輪から電流が走りダイノボットが苦悶の唸りをあげる。その様子を睨みつけるはディセプティコン兵士アストロトレイン。 「何をしている!さっさとオートボットを食らい殺せ!お前はそのために生み出された殺戮マシーンだろうが!」
怒りの声をあげながら首輪の電流を遠隔操作しダイノボットを屈服させようとするアストロトレイン。だがSARAがダイノボットへと手を伸ばし、気持ちを集中させると首輪は一瞬で砕け散った。
「な、何だと!?」
驚くアストロトレイン。次の瞬間彼の顔面へ鉄球ストレートパンチがめり込みその体が大きく後方へと吹き飛ばされる。隙をつきブローンが殴りかかったのだ。そんなブローンの元へダイノボットが近づき、彼の匂いをかぎ高い声をあげる。
「なんだ?お前さん俺のことも気に入ったのか。まあさんざんじゃれあったからな!」
ブローンとダイノボットはSARAを守るように並びたち、周囲のディセプティコン達へと闘志を向けた。

完全に開かれたディメンションゲート…その先はショックウェーブが目的とする場所、ディセプティコンのリーダーメガトロンがSARAの手により閉じ込められた時空へとつながっている。時空世界同士は同じ時の流れを共有しておらず、メガトロンが飛ばされた先でどれほどの時が流れたのかもわからない。果たしてメガトロンがどうなっているのか・・・未だ凶悪な暴走状態で無の時空に存在しているのか、もしくはあの暴走する力に飲み込まれてすでに滅んでいるかもしれない。
「だが・・・どちらにしてもそれを確認するわけにはいかん、ましてやショックウェーブを迎えに行かせることなど断じて許すわけにはいかない!」
ディメンションゲートを睨み思いを巡らすオプティマス、そんな彼にサウンドウェーブの放つデータディスク部隊が襲いかかる。
「くっ・・・小さい見かけによらず手ごわい!」
オプティマスの動きを観測するサウンドウェーブから戦闘指示をリアルタイムで受けるデータディスク部隊は、その小柄な体を活かした俊敏な連携攻撃でオプティマスを翻弄していた。だがオプティマスもいいようにやられるだけではない、ましてやメガトロンが戻ってきてしまうかどうかの瀬戸際である。
「うおおおおっ!」
背中に背負ったイオンブラスターでレーザービークを、右手の銃で正面のラヴェッジ、そして側面から襲いかかるフレンジーへは左の鉄拳を…オプティマスは三方向から来るデータディスク部隊を見事に捉えた。だがその瞬間、静観していたサウンドウェーブが肩のミサイルランチャーを撃ち込む。咄嗟に直撃は避けるもオプティマスは再び敵の連携に囲まれてしまった。
「サウンドウェーブ・・・さすがメガトロン直属の部下だけあるな・・・!」
オプティマスがサウンドウェーブ達と戦う傍、ホットロディマスとショックウェーブもまた死闘を繰り広げていた。
「実際お前には感服するよショックウェーブ!何重にも張り巡らされた策に俺たちは翻弄される一方だった!」
銃撃を繰り出しながらホットロディマスはショックウェーブの一連の行動を思い出す。最初に囮を出しオートボットのコンピューター棟に侵入、時空移動施設へとウィルスを仕込むと同時にディメンションゲート発生装置の設計データを奪った。その後ウィルスによりオートボット基地のゲートを利用しての時空移動を図る。だが阻止され目的とは別の時空へ飛ばされるも、そこで見つけた膨大なエネルゴン鉱脈の力を利用しその場で時空移動を敢行。それが防がれると今度は自身に時限式の覚醒剤を仕込みまんまとオートボット基地から生還。更に時空移動の増幅エネルギーとなるSARAの力をもつスタースクリームを奪還し、ついにこうして目的の時空…メガトロンのいるであろう時空へとディメンショ ンゲートを開くに至った。何重にも仕込んだ計画、そして非常時への臨機応変な対応力。それこそ戦闘力以上にショックウェーブが恐れられる所以。
「なぜだ!なぜそれほどの能力をもつお前がメガトロンに従う!?奴がやろうとしてることがクラウド世界の崩壊、同時にお前達自身の破滅を招くことぐらいお前にはわかっているだろう!?」
そのホットロディマスの問いかけにショックウェーブは掠れた声で、だがはっきりと答えた。
「それは・・・メガトロン様の支配こそ・・・全時空界の・・・恒久なる平和への道だからだ。」
ショックウェーブの非情な論理により導き出された答え、それはメガトロンの思いと同じく絶対的な力による支配。それこそ混沌とした時空界を永遠に存続させる唯一絶対の方法であると彼もまた確信しているのだ。メガトロンという強者こそその支配者にふさわしいという解、そこには私情も野望もない、ただ絶対なる論理があるだけである。
「何を言っても聞く耳は持たないってことか・・・!」
不気味に鳴動するディメンションゲートを背にショックウェーブがブラスターを連射、その猛攻は徐々にホットロディマスを追い込んでいき、ついにその手を撃たれ武器である銃を落としてしまう。
「ぐ!?しまった!・・・だが!」
ひるむことなくホットロディマスはカーモードへと変形、一気に加速して接近しロボットモードへ戻りながら剣を振りかざして斬りかかる。だがその刀身をショックウェーブは右手のクローで見事なタイミングで掴みとった。
「貴様の・・・戦闘データは・・・揃っている。」
そのまま剣を力づくで奪いとり投げ捨てる。武器を無くしたホットロディマスが一瞬戸惑った隙に、その首を右手で掴み上げ宙吊りにするショックウェーブ。エネルギーが漲り発光するクローが首筋に食い込み苦悶に顔を歪めるホットロディマス。
「ようやく・・・貴様を・・・始末できる。」
幾度となく自分の計画の前に立ちはだかり邪魔をしてきた憎き相手、ホットロディマスのボディへと左手のブラスターを構えるショックウェーブ。
「ま・・・だ・・・、終わりじゃない!」
ホットロディマスは薄れる意識を奮い立たせ自分を締め上げる腕に向け膝蹴りを見舞う。鋭い膝パーツがショックウェーブの右手に刺さり一瞬力が緩むと、ホットロディマスは両足で思い切り相手を蹴り飛ばした。すかさずホットロディマスは落ちていた自身の二つの武器を拾い上げ、それを組み合わせ大型の銃剣の形へと合体させると一気に真っ直ぐ前へと走り出した。
「うおおおおっ!」
ショックウェーブは起き上がりブラスターを放とうとするも間に合わず、ホッ トロディマスの銃剣の切っ先がショックウェーブのボディへと突き立てられる。
「終わりだ・・・!ショックウェーーーブ!!」
ボディへと剣先を突き刺したまま強烈な銃撃が撃ち込まれ、爆音と共にショックウェーブは後方へと吹き飛び、力なくディメンションゲートの横へと転がっていった。胸から煙を噴出しさすがのショックウェーブももう立ち上がることはできそうにない状態であった。
「そのダメージではもはや時空移動することもできまい、お前の負けだ、ショックウェーブ。」
ショックウェーブほどでないとはいえ、同じくダメージを負っているホットロディマスが痛みを堪えながらも勝利宣言をする。両者の因縁の対決はここに決着がついた…そう思われたその時。
「・・・ふ・・・ふ・・・ふ・・・。」
「お前…何がおかしい?・・・うっ!?」
低く小さな声で、だが確かに笑い声をあげているショックウェーブをホットロディマスは不気味に思うも、すぐにそんな気持ちは吹き飛んだ。何か…言葉では言い表せないような恐ろしいものにスパークを掴まれたような感覚をもったからだ。
「な・・・この感じは・・・まさか・・・!」
それはサウンドウェーブと戦っていたオプティマスも同様であった。直後、ディメンションゲートより稲妻のような衝撃波が襲いかかる。ホットロディマスとオプティマスは咄嗟に反応するも、かわしきれずダメージを負ってしまい倒れこんだ。
「がっ・・・いったい何が・・・?」
ディメンションゲートの奥・・・恐ろしい気配は一層濃くなり、徐々にその影が見えてくる。
「・・・時間は・・・充分・・・稼いだ・・・。」
ショックウェーブが淡々とつぶやく。
「私が出迎えに・・・行くまでもない・・・。門を・・・開けておけば・・・あの方は・・・ご自分で・・・帰ってこられる・・・!」
ディメンションゲートから現れた者、銀の甲冑に身を包んだ禍々しささえ感じさせるその姿、それは紛れもない、クラウド世界と全時空界を危機へと陥れた一連の事件の張本人・・・オプティマスは声を振り絞るようにつぶやいた。
「メ・・・メガトロン・・・!」
オプティマスが二度と会いたくないと願っていた者・・・ディセプティコンリーダー、メガトロンの帰還である。だが彼はOG001時空での時のような暴走状態ではなく、その表情は静かに、かつぞっとするような冷たい笑みを浮かべていた。
「お帰りなさいマセ、メガトロン様・・・。」
いつの間にかメガトロンの傍へと移動していたサウンドウェーブが深々と頭を下げる。メガトロンはそれを一瞥すると、オプティマスへとその鋭い眼光を向ける。
「・・・400万年ぶりともなると忌々しきお前の顔も懐かしく思えるぞ、オプティマス。」
400万年?オプティマスはメガトロンの言葉に耳を疑った。それほど長い時間が奴の閉じ込められていた時空では経っていたのか?それに奴のあの落ち着いた状態はいったい・・・?SARAの力はどうなったのか?オプティマスは頭に疑問が浮かぶのを抑えきれずにいた。その時体を引きずりながらもショックウェーブがメガトロンへと近づき、その姿をブラスターモードへと変化させる。
「メガトロン・・・様・・・、あなたの力を・・・存分に・・・。」
傷だらけの体で献身する部下の姿にメガトロンは薄く笑みを浮かべ、ショックウェーブが変形した大型砲を構える。メガトロンの体から強大なエネルギーが流れ込み、ショックウェーブブラスターの砲口がみるみる光を集めていく。
「司令官!ふせて!」
ホットロディマスが叫んだその瞬間、部屋はまばゆい光に包まれる。強大な熱線が放射され周囲を消し飛ばし、その光は大地をえぐり地上のコロシアムにも到達する。
「ん・・・何か音が・・・」
地上の戦士達がそう思った瞬間、地面からすべてを焼き尽くす光線が巻き起こり光の柱となってアンダーグラウンドの空へと伸びていった。暗く淀んだ暗雲さえも消しとばし天高く輝くその光波は、支配者の帰還と同時に暗黒の時代の始まりを告げる狼火のように見えた・・・。

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