TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 懸 命 ー

第五話「懸命」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

クラウド世界――オートボット司令部は騒然とした状況であった。メトロポリス各所で大規模なディセプティコンの一斉襲撃が始まったのだ。それは先日のクリスタルシティ戦を超える規模で行われ、あのメガトロンによるSARA強奪事件に匹敵する大掛かりなものであった。
「オプティマス司令官…!」
オートボット司令部にウルトラマグナスが入室する、中ではオプティマスが通信メンバーを通じ各地区の被害状況確認と守備隊への指示を出し、鬼気迫る空気が支配していた。
「マグナス、傷はもういいのか?」
「こんな事態におとなしく寝ていることなどできません、私も戦闘に出ます!ご命令を!」
そうは言うものの、ウルトラマグナスのダメージは未だ回復しきっていないことをオプティマスは見抜いていた。少し考えたのち、オプティマスは選択する。
「マグナス、では君はこの司令部でオートボット部隊の指揮をとってくれ。」
「私が・・・ですか?」
司令官の思わぬ提案に思わず問い直すウルトラマグナス。だがオプティマスは真剣な目で彼に語る。
「戦士として以上に指揮官としての君の優秀さを私はよく知っている、君がオートボット全部隊とメトロポリスの状況を把握するために常に情報を集めていることもな。君なら私の代わりに十分指揮がとれると信じている。頼めるか?」
部屋にいるラチェットら通信メンバーもその話を聞き、納得した表情で微笑む。ウルトラマグナスも覚悟を決めた面持ちでまっすぐにオプティマスを見つめ力強く答えた。
「わかりました、微力ながら私の全身全霊をもって務めさせて頂きます。しかし、そうなりますと司令官はどちらへ?」
その質問にオプティマスは愛用の銃を手に取りながら静かに答える。
「私はもうじき帰ってくるであろうホットロディマスとSARAを出迎えに行く。」

メトロポリス各所で起こるディセプティコンの襲撃は都市部や軍事施設など要所要所で、しかもオートボット守備隊の裏をことごとく付いた見事な手際で行われた。それは作戦立案のショックウェーブの手腕でもあったが、そのための多くの情報を集めていたのが恐るべき諜報部隊…。
「レーザービーク、ラヴェッジ、フレンジー、イジェークト!」
ディセプティコン諜報員サウンドウェーブと彼の部下ディセプティコンデータディスク部隊である。メガトロン発起から今日に至るまでの長い時間における彼らの綿密な諜報活動により、メトロポリスの地理や施設はもちろんオートボット守備隊の配置やその穴まで全てが調べ上げられていた。そして今、サウンドウェーブの胸部より次々と射出される忠実な兵士達はその小柄な体からは想像もできない戦闘力で、このメトロポリス第5地区のオートボット達を脅かしていた。 「どけどけチビども!ボッツを殺すのは俺の仕事だゼ!」
そんな中、歓喜の声をあげ両手に構えた銃を乱射する者が一人、ディセプティコンの若き凶戦士デッドロックである。
「ひるむな!迎え撃て!」
第5地区を守るオートボット守備隊の部隊長、歴戦の勇士アイアンハイドが負けじと声を張り上げ仲間を鼓舞する。アイアンハイドは暴れまわるデッドロックの姿を見つけると、腕のガトリングガンを近接用のソードに切り替え接近戦をしかける。振りかぶった一撃がデッドロックの肩をかすめた。
「うおっと!なんだ死にたいのかよオッサン!」
「ディセプティコンの小僧が!俺がこの手で根性叩き直してやるぞ!」

同じ頃、オートボット時空移動施設もまたディセプティコンの襲撃を受けていた。施設の周囲を囲むディセプティコンの最前列に見えるは、整然とした佇まいで進撃する五人の兵士・・・コンバッティコン部隊である。
「なんだあいつらは!他のディセプティコンの荒くれ者達とは明らかに雰囲気が違う・・・?」
施設を守るオートボット部隊長のジャズが言うとおり、その完璧な連携行動は訓練等で得られるようなものでは無い。コンバッティコンの5人は元はアンダーグラウンドの中でも特に凶悪な犯罪者達であり、メガトロンにさえも従わぬ狂犬集団であった。だがその戦闘力に目をつけたショックウェーブの手により、彼らは頭脳を調整され今や命令に従い標的を破壊するだけの傀儡兵士と化していた。
コンバッティコンを中心に侵攻するディセプティコン達を相手に徐々に追い込まれるオートボット戦士達。
「この時空移動施設はなんとしても死守しなければ・・・!」
ジャズが己の身を捨てる覚悟での反撃を考えたその時、赤いトレーラーが爆音をあげて駆けつけディセプティコン兵士数名をなぎ倒し急停車する。ロボットモードへとトランスフォームしたその者こそまさにオートボット戦士達の希望となるリーダー、オプティマスプライムであった。
「司令官!来てくださったのですか!」
「遅れてすまないジャズ。みんな、体制を立て直せ!連中の思い通りにはさせるな!」
リーダーとしてのカリスマと優秀な戦士としての能力をもつオプティマスが加わったことで、オートボット戦士達も闘志を奮い立たせ再び迎撃に当たる。
その頃施設内部ではディメンションゲートが開放され、中から第9BW時空より舞い戻ったSARAとホットロディマスが現れる。ホットロディマスの肩には動かなくなったショックウェーブが抱えられていた。
「ロディマス!よく無事で戻って来てくれた。ショックウェーブも倒したのだね。」
パーセプターがかけより労いの言葉をかけるもホットロディマスはすぐに状況を問う。パーセプターから現在の戦況、メトロポリス各地で襲撃が起き、この施設の周囲にもディセプティコンが集まってきていることを知らされ、ホットロディマスの表情が強張る。
「くそ!これがこいつの仕組んだ最後のあがきなのか?!ふざけやがって!」
悪態をつきながらホットロディマスはショックウェーブのボディを床へ乱暴に投げ捨てた。大きな音が室内に響きSARAが少し怯える。
「俺も今から外の敵を迎え撃つ!万が一に備えてSARAをシェルターに避難させてくれ!」
「ロディマス!」
言うが否やホットロディマスは外へ向けて通路を駆けていく。SARAはしばらくその方向を見つめていたものの、護衛のオートボット戦士に促されシェルターへと歩いていった。
施設の外ではコンバッティコンの連携攻撃に手を焼きながらも、オプティマスの指示のもとオートボット戦士達は互角以上の戦いで徐々に形勢を巻き返しつつあった。
更に施設内部よりホットロディマスが勢いよく飛び出し、ディセプティコンの群れへ銃撃を放つ。
「ホットロディマス!無事に戻ってきたのか!」
「司令官!早くこのならず者共を片付けましょう!」
オプティマスとホットロディマス、オートボット戦士の中でもトップクラスの戦士二人が並びたつ。その勇士にオートボット達は勇気付けられ、ディセプティコン達は恐れおののいた。だがそんな中コンバッティコンリーダーのオンスロートの瞳が怪しく光る。
「トランスフォーメーション、コンバッティコン・・・ユナイト!」
するとコンバッティコンの5体は瞬時に形を変え、オンスロートを中心に文字通り手足となって合体し、みるみるうちにその体を巨大化させていく。
「な・・・なんだと・・・!?」
オプティマスが息を飲む、目の前にそびえ立つは自分たちの何倍ものサイズとなった大型巨人。これぞショックウェーブが彼らコンバッティコンのボディに与えた最終兵器、軍事合体巨兵ブルーティカスである。
「ミッション開始・・・目標の完全破壊。」
轟音を響かせながらその巨大な腕を振り下ろすブルーティカス、オプティマス達はなんとか回避するも地面が大きくえぐられ地震のような衝撃が巻き起こる。その威力と威圧感にオートボット達は浮き足立ってしまい、逆にディセプティコン達は勢いを取り戻し再び進撃を始める。
「オートボット守備隊メンバーは他のディセプティコンを迎撃せよ!この巨人は・・・私とロディマスでなんとかする!」
オプティマスの言葉にホットロディマスは力強く頷くと、お互いに銃を構えつつブルーティカスを挟み込むように展開しアタックを開始した。

舞台は変わり、メトロポリスの外れにある建物、賑やかなメトロポリス内において唯一薄暗い雰囲気を放つこの場所はクラウド世界の犯罪者を収容・管理している刑務所である。だが今その上空にも禍々しいディセプティコンエンブレムを抱えた飛行物体が接近しつつあった、ディセプティコン輸送兵アストロトレインが変形したシャトルである。中から大量のディセプティコン兵士が降下し刑務所へと襲いかかる。その中心にはディセプティコン航空兵サンダークラッカーと、彼が握る首輪の先につながれし殺戮マシーンダイノボットの姿もあった。
「なんで俺がこんなおっかねえ獣を扱わなけりゃならねえんだか・・・ほれ行けダイノボット!好きなだけ暴れて来い!」
着地と同時にビームの鎖を解除すると、ダイノボットは荒い息使いでまっすぐに敵地へと駆け出す。
「目標メトロポリス刑務所!兵士たちよ徹底的に破壊せよ!」
上空からアストロトレインが号令をかける、だがオートボット守備隊もこの施設の警戒は厳重に行っており大勢のメンバーが迎撃に出る。最前列には緑の巨漢、怪力戦士ブローンが勇ましく立つ。
「やっぱりここにも来やがったか!待機していた甲斐があったぜ!自ら刑務所に来るとは殊勝な心がけだなディセプティコン共、一人残らず牢屋にぶち込んでやるから覚悟しな!」
そう言うブローンに真っ先に飛びかかってきたのはダイノボットであった、とっさに腕でガードするもダイノボットの鋭い牙はブローンの強固な腕部装甲へと突き刺さり、強靭な顎の力でグイグイと食い込んで行く。
「また会ったなディセプティコンのペット野郎、そんなに俺が気に入ったんなら思いっきり可愛がってやるぜ!」
そう言うとブローンはダイノボットの首根っこを掴み、強引に引き剥がすと地面へ激しく叩きつけた。
一方、刑務所内では看守のオートボット達が外の戦いの銃声を聞きながら、緊張した面持ちで待機していた。
「ディセプティコンがこの刑務所にも攻め込んでくるとは、投獄された犯罪者達の解放が目的なのかな?」
「ビクビクするなよキックオフ。外の守備隊の守りは鉄壁だ、そうそう連中も侵入できはしないさ。」
看守の二人がそんなことを話してると、背後に突如何者かが現れる。二人が気づいた時にはすでに遅く、銃撃が二人の看守の体を貫いた。
「ふいー、潜入成功だ。」
それは漆黒の翼を持つ者、ディセプティコンのスカイワープであった。彼は他のトランスフォーマーにはない恐るべき特殊能力を持っている、それは彼の名前が示す通り短距離ながら一瞬で別の場所へと移動することが可能なワープ能力である。
「ショックウェーブの手はず通りだ、外に気を取られ中の警備は緩いもんだぜ。さて…目的のあのバカはどこだ・・・?」
彼のその能力は多くのエネルギーを必要とするため使用に制限はあれど、本来とてつもない脅威であり、使いようによっては彼はディセプティコンの中でより高い地位についていてもおかしくはないのだが・・・。
「めんどくせえ、片っ端から牢をぶち破ってやる!犯罪者ども!解放してやるから暴れやがれ!」
幸か不幸か彼はその能力を使いこなせる知恵を持ちあわせていなかった。逆に言えば今回ショックウェーブにその力を見こされ利用されたことにより、スカイワープはオートボット達にとって大きな脅威になったのである。牢を破られたアンダーグラウンドの犯罪者達は次々に脱獄し、各自思うままに破壊活動を始めた。
「何!刑務所から煙だと!?いったい何がどうなって・・・うわ!」
異常自体に気を取られたブローンは、ダイノボットの鋼鉄をも砕く尻尾の一撃に大きく吹き飛ばされた。刑務所内はもはや脱獄犯達の無法地帯へと変わり果てていた。

時空移動施設内、ディメンションゲートルーム。パーセプターが外の様子を気にしながらもゲートの操作をしていた。
「大変な事態だ・・・現在各時空界に出ているオートボット戦士達も呼び戻して応援をたのまないと。」
その時、どこからか異音が聞こえたのに気づく。何かのタイマーが作動したような不気味な音。パーセプターが不審に思ったその時、部屋の隅に転がっていたショックウェーブの体がビクンと跳ね上がり、二度と灯らないと思われた瞳に薄暗い光が宿る。
「な・・・なんだと・・・そんなバカな・・・!」
施設の外、生半可な攻撃を受け付けないブルーティカスの頑強な巨体に苦戦を強いられるオプティマスとホットロディマス。その元へ緊急通信が入る、だがそれは通信というより叫びに近いものであった。
「司令官!ロディマス!ショックウェーブが・・・うわああああ!?」
それは今自分達が守って戦っている時空移動施設内にいるパーセプターの声。通信を受けた二人が何事かと戸惑ったその瞬間、背後の時空移動施設内から爆発音が響いた。同時にブルーティカスは主からの信号を受け、左拳を強く握り時空移動施設の壁を強烈なパンチで打ち砕き、内部へと腕をねじ込ませる。そしてその腕が引き抜かれると、その掌には紫の影が立っていた。
「な・・・ショック・・・ウェーブ・・・!?」
ホットロディマスは目を疑った、奴は完全にシャットダウン状態で自力での回復など到底不可能だったはず・・・。驚き固まる彼を尻目に、ショックウェーブはぎこちなく体を動かし自分のボディの調子を確認するようなそぶりの後、トランスフォームを開始する。だが形を変えて行くその姿は、ヘリコプターでもオルタネイトモードでもなく・・・。
「な・・・なんだと・・・!更に別の姿になれるのか・・・!?」
変わったその姿は、大型のビーム砲台であった。ブラスターモード…これこそ彼元来のトランスフォーム形態であり、すべてを焼き払う最終兵器である。 「う・・・て・・・」
どうやら発声機能を傷めているようでいつも以上にくぐもった声を発するショックウェーブ、砲台に変わったそのボディをブルーティカスが握りしめ、自らの体と接続しエネルギーをチャージ、オートボットへと向け構える。
「まずい!みんな散開しろ・・・!」
次の瞬間ショックウェーブの砲口から強烈な閃光が放たれた。

メトロポリス刑務所の最深部、重罪人や危険人物が隔離されている棟にスタースクリームは投獄されていた。エネルギーは生命活動するに最低限だけ残され、全身を強固な拘束具で固定し武装はおろか指一本動かすこともできない。通常ここまでの処遇はなかなかされるものではないが、彼が未知なるSARAの力を持つ者ということでこの状態もやむなしであった。そんな中でもスタースクリームの意識は覚醒しており、彼の心はただただ怒りと悔しさに支配されていた。
ふと、外が騒がしくなったことに気づくと、突如部屋の壁が破壊され見慣れた顔が入って来る。 「ス・・・スカイワープじゃねえか・・・。」
エネルギーを抜かれ弱々しい声でスタースクリームは反応する。スカイワープは特に再会を喜ぶこともなく無言でスタースクリームの拘束具を破壊し解放した。
「お、お前・・・俺様を助けに来てくれたのか・・・?」
「俺の意思じゃない、ショックウェーブの指示だよ。」
意外な名前にスタースクリームは驚く、以前から自分のことを見下していると思っていたメガトロンの腰巾着野郎のショックウェーブがまさか自分を助けるよう指示出すとは。
「へ・・・へへ、そうか、やっぱり俺様の力が必要だってことか。仕方ねえな。」
嬉しいような照れるような、久しく感じてなかった感情があふれ自然と笑みが浮かぶスタースクリーム。そんなにやけた彼をスカイワープは気持ち悪そうに一瞥すると、一言通信を入れた後天井を破壊する。銃を連射し何層も撃ち抜き、ようやく外が見えると空には巨大なシャトルの姿が。
「アストロトレインじゃねえか、あいつも俺様のために来てやがるのか。へへ、悪い気分じゃねえ・・・。」
スカイワープはスタースクリームを抱えるとゆっくりと上昇しアストロトレインへと乗り込んだ。
「よう、ご苦労アストロトレイン。俺様の帰還だぜ・・・。」
スタースクリームの挨拶には反応せずアストロトレインは地上で暴れるディセプティコン達に指示を出す。
「ディセプティコンの兵士たちよ、目的は達成した、各自手はず通り速やかに撤退せよ!」
一斉に蜘蛛の子を散らすように引き上げるディセプティコン、ショックウェーブの指示とデータディスクチームの情報により各々の撤退ルートはすでに決められていた。
「ほれ引き上げるぞ、いうことを聞け!」
サンダークラッカーが再びダイノボットの首輪を起動させ、電流を流し大人しくさせたのち引き下がらせる。
「くそ!好き勝手やらせて逃がすと思うか!」
傷つきながらもブローンは追おうとするも、脱獄しようと暴れ回る刑務所内の犯罪者達を鎮圧することが優先と感じ引き下がる。
「くっ・・・ディセプティコン共め!!」

時空移動施設周辺は惨憺たる状況であった。ブルーティカスのエネルギーを受けたショックウェーブブラスターモードより発射される熱線は施設の建物や周囲を容赦無く焼き払い、オートボット戦士のみならずディセプティコン達をも巻き込むほどの大被害を広げていた。オプティマスやホットロディマスもダメージを負い、自分の身を守るので精一杯な状態であった。
その時ショックウェーブへメッセージが入る、作戦目標確保というアストロトレインからの報告だ。
「頃合いだ・・・、ブルーティカス・・・、後は任せる・・・。」
するとショックウェーブはヘリモードへと変形、ホットロディマスに傷つけられたローターを起動させなんとか舞い上がり、そのまま飛び去ろうとする。
「ふ・・・ふざけるな!お前だけは逃がさんぞショックウェーブ!」
怒りの声と共にホットロディマスはヘリへとトランスフォームしショックウェーブを捕まえんと飛び立つ、だがブルーティカスの巨大な腕が伸び鷲掴みにされてしまう。
「くそ!離せ!」
プレス機のような握力でグイグイと締め付けられ身動きのとれないホットロディマス、その間にショックウェーブの姿はみるみる小さくなり、やがて見えなくなった。
「ジャズ!動ける者達と共に援護を頼む!トランスフォーム!」
オプティマスはビークルへと変形し、足元からブルーティカスの巨体を伝って一気に駆け上って行く。ブルーティカスは左手でオプティマスを掴もうとするも、オートボット戦士たちの一斉射撃に阻まれ思うように動けない。そのまま胸元まで駆け上ったオプティマスはロボットモードへと戻りジャンプ、ブルーティカスの両目である視覚センサーへと銃撃を連射する。目をやられたブルーティカスは一瞬怯み、その隙にホットロディマスは腕から脱出、空中でロボットモードへと変わり武器の剣を構える。
「悪く・・・思うな!」
勢いよく落下しブルーティカスの額へ剣を突き立て、そのまま一気に下降する。
「うおおおおおっ!!」
両手で握られた剣がブルーティカスのボディを縦にメリメリと斬り裂く。着地したホットロディマスの頭上でブルーティカスは断末魔の叫びを上げながらその巨体を真っ二つに裂かれ、轟音と共に崩れた。
爆煙を払いホットロディマスはすぐに空を見渡すが、すでにショックウェーブの姿はどこにも見つけることができなかった。
「く・・・くそぉぉぉ!!」
燃え盛るメトロポリスにホットロディマスの絶叫が虚しく響いた。

「今回の連中の目的はスタースクリームの奪還だったというわけか?」
オートボット守備隊に各所の救助指令を出した後、オプティマスは主要メンバーを司令部に集め情報の整理をしていた。
「確かに奴はSARAの力によってパワーアップはしましたが、正直ここまでして連中が取り返す価値があるのか疑問ですね。能力的にも、ココ的にも。」 刑務所の鎮圧を終えたブローンが頭を指でコツコツつつきながら言う、それには周囲のメンバーも同意見のようだ。
「それにSARAは自分と同じ力をもつ存在を感じ取れる・・・これによって連中のアンダーグラウンドでの隠れ場所もわかことになるでしょう。そのことに奴らは気づいてないのでしょうか?そもそも連中の本当の目的はいったい・・・?」
ウルトラマグナスの言葉に、今まで沈黙していたホットロディマスが口を開く。
「・・・ショックウェーブは今まで何重もの作戦を仕掛けてきた、一つ阻止されるたびに即座に次の作戦を実行する。恐るべき周到さだ。」
ホットロディマスの傍のSARAが不安そうに彼の足元に寄り添う。
「・・・そうだ、奴はBW時空で会った時にエネルゴン鉱脈の力を利用してディメンションゲートを開こうとしていた。それ以前のメトロポリスへの襲撃といい、奴はディメンションゲートを開くことを目的にしているのは間違いない。」
そこへショックウェーブの攻撃を受け傷を負ったパーセプターがフラつきながらもやってくる。
「パーセプター、お前さんは傷が酷い、休んでなきゃ・・・。」
「大丈夫だよブローン。司令官、ロディマス、実はショックウェーブがウィルスを仕込んでディメンションゲートのコントロールを乗っ取った時、本来奴が飛ぼうとしていた時空がどんなところなのか判明したのですが・・・。」
一同がパーセプターの言葉に注目する、それこそ今回の一連の事件を起こしたショックウェーブの最終目的地であるに違いないからだ。
「場所がわかったはいいのですが、目的は見えないというか・・・。」
「御託はいいから早く言うんだ!何か時空世界をひっくり返すような大きなエネルギーが眠っていたりするんじゃないのか!?」
少し苛立ったように言うホットロディマスを尻目に、パーセプターは答える。
「・・・何も無いんですよ。生き物も、目立つエネルギーも、時空を脅かすような事象も無い。ただ時間の流れが存在するだけの無の世界。広い時空世界にはこういった時空も珍しくはないのですが、何故奴がそんなところにゲートを開こうとしたのかはさっぱり・・・。」
それを聞きオートボット達も同じく理解できないといった顔をしていた、ただ一人、オプティマスを除いて。
「何も・・・無い時空だと・・・。」
オプティマスは声を震わせつぶやく、失われし「SARA」の意志の言葉が彼の脳裏にフラッシュバックする。

――あのメガトロンは危険な状態でした・・・ですので私の残りわずかな力を使い、何者も存在しない「無」とも言える時空に送り閉じ込めたのです――

「わかった・・・奴の・・・ショックウェーブの目的は・・・、メガトロンを連れ戻すことだ・・・!」

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