TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 野 生 ー

第四話「野生」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

多種多様な動物達と広大な自然が広がる大地、天空に浮かぶ二つの月に照らされたそこは第9BW時空。その地に飛ばされてきたクラウド世界からの旅人ホットロディマスとSARA。彼らの前に突如現れた言葉をしゃべるサイは、この世界のトランスフォーマーであった。
「改めて自己紹介をするんダナ、ボクはサイバトロン戦士のライノックス、よろしくなんダナ。」
ライノックスと名乗るその巨漢は大柄な見た目とは裏腹に丁寧な物腰で挨拶をしてきた。だが巨漢と言ってもそれはSARAに対してのサイズであり、同じトランスフォーマーであるはずのホットロディマスと比べるとだいぶ小柄なロボットであった。
「サイバトロン・・・ということはオートボットのようなものか。出会ってしまったものは仕方ない。俺はホットロディマス、この子はSARAだ。」
ホットロディマスに紹介されSARAは会釈をする。
「悪いけど少しお話を盗み聞きさせてもらったんダナ・・・、信じ難い話だけど君達は別の世界からやってきたという解釈でいいのかナ?」
ホットロディマスは失敗したとばかりに渋い顔をするも、ここは下手にはぐらかすよりある程度事情を話して協力を得た方がよさそうだと判断した。ライノックスがオートボット・・・もといサイバトロン戦士であるということ、それにSARAが懐いているところを見るに彼は悪い奴ではなさそうに見えたからだ。
ホットロディマスはクラウド世界やSARAのことは最低限の情報のみを伝え、この時空に紛れ込んだ犯罪者…ショックウェーブを見つけ出すのが目的であることを説明する。
「にわかには信じ難いとは思うが・・・、あとできればこのことはこの世界の住人にはあまり話さないでほしい。」 「了解、大体の事情はわかったので出来るだけ協力はするんダナ。ボク達としてもそんな危険な奴がデストロンとつるんだりしたらやっかいなことになるし。」
ライノックスの言うデストロンとはこの時空におけるディセプティコンのような連中かと、ホットロディマスは以前得た知識を思い出す。
「もし悪いトランスフォーマーがこの近辺で何か探しているとすれば、恐らくボク達が今調査中のエネルゴン鉱山なんダナ。」
エネルゴン鉱山、そんなものがこの惑星にはあるのかとホットロディマスは驚く。確かに純粋かつ強大なエネルギーが発掘できるような場所があれば、そこにショックウェーブが目をつける可能性はある。
その時ライノックスの様子が突然おかしくなり、ロボットモードからサイの姿へ戻ってしまった。
「ああ・・・この辺りはだいぶエネルゴンの影響が強いんダナ。ロボットモードでいられる時間が短くなってる。君は平気なの?」
言われてホットロディマスも少し体の不調を感じ、これはこの惑星にあふれる過剰なエネルゴンの過負荷によるものかと改めて確信する。
「確かに体によくは無さそうだが、お宅ほどの影響は無いようだ。」
どうやら目の前のライノックスと自分は同じトランスフォーマーでも異なる存在のようだ。体の大きさの違いや有機生命体への変身能力もそうだが、もっと根本から・・・。前に第24BW時空に来た時はトランスフォーマーに出会わなかったので気づかなかったが、こんなことならこの時空のトランスフォーマーについてもっと学んでおけばと少し後悔するホットロディマス。
そんなことを考えながらふとSARAの姿が見えないことに気づき周囲を見回すと、幸いSARAはすぐに見つかるもその光景には目を疑った。なんとSARAは人間ほどのサイズはある大ネズミにまたがってはしゃいでいたのだ。
「はいはーい、ラットル君の鼠輸送でございまーす。」
しかもしゃべるネズミである。
「ホットロディマス、すまないんダナ、僕の仲間達が来ちゃったんダナ・・・。」
申し訳なさそうにうつむくライノックスの前に、ぞろぞろと種族の異なる動物が4頭集まってくる。ゴリラにチーター、更には恐竜のヴェロキラプトルまで。ネズミがSARAを降ろしながらライノックスに迫る。
「ちょっとちょっと、単独調査に行くのはいいけどちゃんと連絡入れてよ!てっきり野生に帰っちゃったのかと思ったよ。それに知らないうちに大きなお友達もできたみたいじゃない。」
しゃべる動物達の登場に戸惑うホットロディマスへチーターと恐竜が近寄る。
「でっけー、まるで巨人ジャン?8m級ジャン!」
「もしかしてお前、俺達の先祖であるグレートウォー時代のトランスフォーマーなのか?ダー!」
そんな恐竜へ意地悪そうな表情で突っ込みをいれる大ネズミ。
「ダーダー恐竜!お前さんちょっとイマジネーション旺盛すぎるんじゃないの?そんな大昔の存在がなんでオイラ達の前に現れるのさ。」
自分の周りをうろうろするネズミを恐竜はうっとうしそうに悪態をついて叩く。そんなメンバーを落ち着かせながら、リーダーと思われる威風堂々とした雰囲気のゴリラが挨拶をする。
「失礼した。私はサイバトロン司令官のコンボイ。彼らは部下のチータスにダイノボット、あのネズミはラットルだ。すまないが君の事を我々にも教えてくれないか?」
ホットロディマスはどうしたものかと考えるも、ライノックスに軽く目配せして、別時空から来たという部分をぼやかしつつある程度の事情を話す。
「・・・すると君達はその犯罪者を追って宇宙からやってきたハンターなのか。」
別時空から、という部分を隠したらそういう流れになった。ホットロディマスは仕方ないとはいえ少し申し訳ない気持ちになる。
「この弱っちそうなチビもそうなのか?この野生の世界じゃあっという間に食われちまうぜ、ダー!」
ダイノボットと呼ばれた恐竜が口を開けSARAを驚かすも、すっかり野生動物に慣れたSARAはその鼻先を優しくなでる。
「ナンパ、してるの?」
無垢な瞳で意外な単語を発するSARAに、くすぐったいのか照れ臭いのかダイノボットは顔を赤くして引っ込む。そのやりとりにホットロディマスは頭を抱えながらSARAがどうか妙な方向に成長しないようにと祈った。
「我々も今からエネルゴン鉱山へ調査に向かうところだ。ライノックスの地質調査で見つけられた鉱山だが、いつデストロンの連中が目をつけるかわからないから早めに行かねば。よければお互い協力できないだろうか?」
コンボイと名乗ったリーダー格のゴリラが提案する、ホットロディマスはそれに乗る形でサイバトロン達と共同戦線をすることを決めた。こうしてサイバトロンのビースト戦士達とホットロディマスは共にエネルゴン鉱山へと向かうことになった。

同じ頃…エネルゴン鉱山の山頂付近、まるでマグマのように流れ溢れる危険なエネルゴンに囲まれた荒地を、一人のトランスフォーマーが周囲を確認するようにゆっくりと歩いていた。それは他でもない・・・クラウド世界よりやって来た招かれざる客、ショックウェーブだ。周囲に漂う膨大なエネルゴンにボディが影響を受け、ところどころ火花をあげるも本人は意に介さず進む。
「・・・これはこの惑星天然の物ではないな。まあいい、このエネルギー量なら・・・予定変更、この場で目的を遂行する。」
その一つ目を怪しく光らせながら、ショックウェーブは準備を始めた。

「チームラットルのトレイルランニングツアーでーす。みなさん他の登山客の迷惑にならないようマナーを守って行きましょー。」
5名のサイバトロンビースト戦士とホットロディマスはエネルゴン鉱山へと続く山道を駆け上がっていた。鉱脈へ近づくにつれ周囲の環境は荒れ、大気中のエネルゴン量は増しホットロディマスのボディにも少しづつ影響が見え出していた。
「SARA、君は大丈夫かい?」
カーモードのホットロディマスは運転席に座らせたSARAの身を案じる。
「平気。でも気をつけて、嫌な感じがする。」
SARAがそう注意を促したまさにその時、突如頭上の山肌から大岩が転がってきた。サイバトロン戦士達は驚きながらもなんとか回避すると、その様子をあざ笑う声が響く。
「山登りご苦労様だなサイバトロン共!だがこの鉱山のエネルゴンは我らが頂くぞ!」
「メ・・・メガトロン!やはりお前たちも気づいていたか!」
聞き覚えのある嫌な名前を耳にしホットロディマスに緊張が走るも、すぐにそれはこの時空のデストロンリーダー・メガトロンのものであると認識した。山肌を滑り降りながら眼前に現れたのは紫のティラノザウルスを中心にプテラノドン、サソリ、蜘蛛、蜂という異様な5匹。だが通常の蜂や蜘蛛よりはるかに大きいそのサイズから、この集団が野生の生き物でないことは明らかであった。
「この場で目障りな貴様らを一掃してくれる!デストロン達よ!変身ー!」
「やむを得ん!サイバトロン!変身ー!」
メガトロンとコンボイの叫びと共に、両陣営の戦士達がビーストモードからロボットモードへと一斉に姿を変える。にらみ合うビースト戦士達。
「サイバトロン共を皆殺しにしろ野郎ども!そうすれば今日のメシはエネルゴンメシだぞ!」
「うーわ!やったブーーーン!」
メガトロンの号令のもと戦いの火蓋は切られ、襲いかかるデストロン兵士達へサイバトロン戦士達は銃を構える。だが共に応戦しようとするホットロディマスをライノックスが制した。
「連中との戦いはボクらの役目なんダナ!君は君の敵を探して止めて!もしその悪党がこの鉱脈のエネルギーを利用したらどんなことになるか想像もつかないんダナ!」
「・・・すまない、ではここは任せた!いつかまた会おう!」
そう言ってホットロディマスはSARAを乗せたままカーモードからヘリコプターへとトランスフォームし、上空へと飛び立つ。
「メガトロン様、なんか見覚えの無いでっかい奴が逃げるッスよ!」
「むう、誰だか知らんがサイバトロンの仲間には違いあるまい、テラザウラー!ワスピーター!追えぃ!」
メガトロンの命令を受け、空を飛べる2体のデストロン兵士がホットロディマスを追跡し銃撃を放つ。
「真っ赤なボディで空を飛ぶなんて、ミーとキャラ被るザンス!ミーより目立つ奴は落ちるザンスよー!」
「僕ちゃんあいつを倒してご褒美もらっちゃうんだブーン。」
背後からの追跡者を確認すると、ホットロディマスは急速旋回し正面に装備した銃をテラザウラーへと向け発射する。
「ギャッ!ミーの美しい翼がー!?」
直撃を受け落下していくテラザウラー、それに気を取られたワスピーターへとホットロディマスは真っ直ぐに突っ込み、すれ違いざまに高速回転するヘリのローターへワスピーターを巻き込む。ヘリモードのローター部分は彼の武器である剣が変化したもので、鋭さと強靭さを兼ね備えているのだ。
「ああーん、バラバラバラバラ・・・」
哀れそれに巻き込まれたワスピーターのボディは粉々に切り刻まれ、細切れの破片となって地上へと落ちて行った。ホットロディマスはすぐに方向転換し鉱山の最もエネルギー反応が高い場所を目指し飛び去っていく。
地上では引き続き激しい銃撃戦が続く両陣営の戦いであったが、突如全員が苦しみ出す。この鉱山はあまりにエネルゴンが満ちすぎて、彼らがロボットモードでいられる時間は極わずかであった。一斉にビーストモードへと戻るも、なおも戦士達はぶつかり合う。
「忌々しい・・・だが素晴らしいエネルギーだ!貴様らを始末してからゆっくり頂くとするぞコンボイ!」
「私がいる限りお前の好きにはさせん、メガトロン!」
ビーストモードで繰り広げられる肉弾戦、野生の闘争本能むき出しでぶつかり合うその戦闘はまさにビーストウォーズと呼ぶにふさわしい光景であった。

ホットディマスヘリが鉱山の山頂付近に近づくと、コクピットに座るSARAが突然声をあげる。
「ロディマス!すごく危ない感じがする・・・、早く止めないと、あっち!」
様子がおかしいSARAにホットロディマスは危機感を抱き、彼女の指す場所へと急行する。到着した場所は高純度のエネルゴンがまるでマグマのようにうねりをあげ流れる地帯。青白く発光するその地表に着陸したホットロディマスはロボットモードへ変形するも、ボディのあちこちから悲鳴が聞こえる感覚に包まれる。ここに長居するのはまずいと感じ、迅速かつ慎重に周囲を探る。
少し進んだ先に目標の人物・・・ショックウェーブはいた。
「やはり奴もこの世界に来て、この強大なエネルギーを使って何かを企んでいたのか・・・!」
周囲にあふれるエネルゴンが誘爆することを恐れ銃を使えないと判断したホットロディマスはショックウェーブを接近して捕らえるべく静かに近づく。だがそんな彼の動きにショックウェーブはすでに気づいており、振り向きざまいきなりブラスターを放ってきた。
「くっ!?」
ホットロディマスはとっさにそれを回避するも流れ弾がエネルゴンに当たり爆発、一気に周囲は炎に包まれる。赤く照らされるショックウェーブの姿を見て、ホットロディマスとSARAは驚きの声をあげる。
「お、お前は…何をしようとしてるんだ・・・?」
ショックウェーブは腹部のキャノピーを開き、内部に仕込んだ謎の機械と周囲の高純度エネルゴンを直結していた。その機械は低い起動音をあげている。
「ディメンションゲートを、開こうとしている・・・。」
SARAの言葉にホットロディマスは驚愕する。奴のボディに仕込まれた謎の機械は時空移動の扉を開くものなのか?
「ショックウェーブ、まさかお前が時空移動システムを作り上げていたとは…。そうか!あの時ウィルスを仕込むと同時に設計データも奪っていたのか!だがディメンションゲートを開くのには大きなエネルギーが必要だ。そのためのエネルギーを増幅するSARAのような力を持たないお前は、このエネルゴン鉱脈を利用することを考えたわけか。」
ホットロディマスは口に出しながら相手の企みを頭の中で整理する。
「いや…本来はオートボット基地のシステムを掌握して時空移動しようとしていたなら、その時向かおうとしていた時空がお前の目的地だったはずか。今ここで改めて時空移動を試みているということは、この時空は本来貴様が目的としていた場所ではないということだな。」
あの時自分が体をはって時間を稼いだのは無駄ではなかったと思うと同時に、パーセプターの働きに今更ながらホットロディマスは感謝した。
「話してもらおうか、お前が危険をおかしてまで、いったいどこの時空へ行こうとしていたのかを!」
「貴様に話すことは何も無い・・・!」
言うや否やショックウェーブは戦闘ヘリにトランスフォームし空へ飛び立つ。ホットロディマスもそれを追うようにヘリコプターへと姿を変え、SARAを乗せて舞い上がった。炎が燃え広がる鉱山の上空で、二機のヘリの激しい空中戦が繰り広げられる。
「あと少しだったのにまた邪魔をしてくれるとは・・・、どうやら貴様を排除せねば私の目的は達成できぬようだな!」
「思ったよりおしゃべりできるじゃないかショックウェーブ、やれるものならやってみろ!」
機銃を放ちながら接近するショックウェーブ、ホットロディマスは銃撃を回避しながら旋回し両者横並びとなる。周囲の強力なエネルゴンの影響でボディに無理が生じ始めている今戦闘を長引かせるわけにはいかないと彼は判断する。
「ちょっと手荒に行くぜ、しっかりつかまってろSARA!」
するとホットロディマスはショックウェーブへ一気に接近し、両者のヘリのローターが激しくぶつかり合い火花を散らす。それはさながらヘリコプター同士の鍔迫り合いのようであった。だがSARAの力で進化したボディをもつホットロディマスの方が単純なぶつかり合いではやはり一枚上手であり、ショックウェーブのローターをボロボロにしそのまま本体まで切り刻み始める。たまらずショックウェーブは落下し始めるものの、ロボットモードへ戻り空中でなんとかバランスを取ろうともがく。その姿にホットロディマスは銃口の狙いをつける。
「今までお前にはやられっぱなしだったが…ここでケリをつけてやる!」
一閃、発射されたビームがショックウェーブのボディを撃ち抜き、そのままエネルゴンが噴き出す大きな間欠泉の裂け目へと落ちて行く。その間欠泉は先ほどの爆発の影響で非常に不安定かつ危険な状態であり、それに気づいたショックウェーブは落下しながらもいずこかへと短い時空間メッセージを発信した。
「プラン変更・・・次のフェイズへと移行する。」
この状況であっても相変わらず感情を感じさせない冷徹な声でそうつぶやくと、自分の体に何か細工をしかけ、危険なエネルゴン溜まりの裂け目へと落ちて行くショックウェーブ。直後猛烈な勢いでエネルゴンの塊が吹き出してきて、彼の体はその光に飲み込まれた。
「な…!まずい!」
上空を飛ぶホットロディマスにまで届くほどの勢いでエネルゴンは吹き出し、まるで火山の噴火のように周囲を飲み込んで行く。それはさながらこ世界の終わりのような光景であった。
「な、なんだあれは!?」
メガトロンと激しい戦いを繰り広げていたコンボイが異変に気づき、巨大な光の柱のように吹き上がるエネルゴンの噴火に、さすがのメガトロンも驚く。
「こ、こいつはやばいぞ、野郎ども!退け!退けー!」
一目散に逃げ出していくデストロン、サイバトロン達も焦り出す。
「コンボイ!早く逃げないとやばいジャン!」
「いや、このままではこの一帯がエネルゴンの炎につつまれ多くの生き物が死に絶えることになる。岩で防波堤を作りなんとかして拡大を防ぐんだ!」
リーダーの命令に悲鳴をあげるラットル。
「ムチャゴリラ言ってる場合じゃないよ!もうおいら達の手でどうにかなるレベルじゃないって!」
「じゃあてめえは尻尾巻いて逃げな!俺はコンボイと一緒に最後まであがくぜ・・・!」
ダイノボットに言われたのが頭にきたのか、自暴自棄になったようにコンボイと共に岩を崩し始めるラットル、サイバトロンメンバー皆が協力し合いなんとか流れをせき止めようとする。
「あの二人は大丈夫かな・・・心配なんダナ。」

「ロディマス、私を降ろして。」 上空を飛ぶヘリの中、SARAの突然の申し出に驚くホットロディマス。
「私が、あの力を抑える。この世界の、たくさんの命を守らきゃ・・・!」
いつもの無垢な少女の雰囲気とはうって変わった、気高ささえ感じさせるその雰囲気にホットロディマスも覚悟を決める。
「わかった、だがお前一人じゃ行かせない。いつだって俺たちは一緒だったからな。」
その言葉にSARAは少しためらったものの、すぐに笑顔を見せ強くうなずいた。
ホットロディマスのヘリは一気に下降、エネルゴンが噴き出す根元へと突っ込んでいく。コクピットが開かれSARAが立ち上がり、両手を上げて意識を集中する。そして激しい光が周囲を包み込んだ。

しばらくして、気を失っていたサイバトロン戦士達が目を覚ます。するとその目に飛び込んできた光景は、先ほどまでマグマのように流れていたエネルゴンがすべて結晶化し、まるで氷山のように固まっている姿であった。それは今までの地獄のような光景とは真逆の、美しささえ感じさせるものであった。
「いったい・・・何が起きたんだ・・・?」
状況を飲み込めないコンボイに、ライノックスがつぶやくように告げる。
「彼らが奇跡を起こしてくれたんダナ、きっと・・・。」

「しっかりしろ、SARA。うまくいったぞ!」
あふれるエネルギーを吸収・結晶化させたSARAは、さすがにくたびれた様子でホットロディマスの腕に支えられていた。
「お前はこの時空の多くの生き物を救ったんだ、SARA・・・よくやった・・・!」
少しふらつきながらもSARAは立ち上がり、ホットロディマスへ笑顔を返した。周囲を見回し、ふと何かに気づく。
「・・・ロディマス、あれ・・・。」
SARAが指差した先、吹き出したエネルゴンが固まりまるで水晶の壁のようになった中に、ショックウェーブが固められていた。
「こいつもあのエネルギーの中に巻き込まれたんじゃただではすまなかっただろう…、スパークの鼓動もほとんど感じられない、虫の息だ。だがこのままここに放っておくわけにもいかないか。」
ホットロディマスは剣を使い結晶を切り崩し、中からショックウェーブの体を取り出した。そのボディは力なくぐったりとして、何かしらの処置をしない限り目覚めることはない瀕死状態であった。
「こいつの処遇はクラウドに戻ってから考えよう。とりあえず一件落着だな。」
だがホットロディマスがそう思ったその時、時空間通信のメッセージが届く。
「お、メトロポリスのオートボット司令部からだ、どれ・・・。・・・な、なに!?」
メッセージを見て顔色が変わるホットロディマス、SARAがそのメッセージを覗き込む。
「ディセプティコンの大規模襲撃により被害甚大、至急帰還せよ。」至急帰還せよ。」

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