TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 潜 伏 ー

第三話「潜伏」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

うっそうと茂るジャングルに、野生動物達の鳴き声が響く。空から降り注ぐ陽光の暖かさに小さな少女・・・SARAは意識を取り戻した。薄く目を開くと見慣れた赤いボディの戦士が見え、心落ち着く声が耳に届く。
「よかった、気がついたかSARA。」
そのホットロディマスの声に応えるように、SARAは上半身をゆっくりと起こす。まだフラつく体をダイノボットがじゃれるように支えた。周囲を見渡すとそこはトランスフォーマーも身を隠せるほどの大きな樹々に囲まれた場所であった。樹木の間から木漏れ日が差し込み、先ほどまでいたアンダーグラウンドの荒野とは正反対の、自然豊かでどこか気持ちが安らぐような環境であった。
「SARA、君が俺達をメガトロンの手から逃がしてくれたんだ、礼を言うよ。だがそんな疲弊した体でとっさに時空移動するなんて、なんとも無茶をしたな。」
ホットロディマスの言葉を聞きSARAは自分の体をさするように確認すると、未だ力を酷使したことによる虚脱感が感じられた。
「少し休めば大丈夫。それよりロディマス達が、無事でよかった。でもロディマス、その体・・・。」
心配そうなSARAの言葉も無理はなかった。メガトロンに負わされたダメージは大きく、ホットロディマスは全身傷だらけで座り込んでいたのだ。SARAの力を得たボディはある程度の自己修復能力があるものの、エネルギーの消耗も激しく回復に難儀している様子である。
「なあに、この程度の傷なんてことないさ。」
SARAを心配させまいとわざとおどけたような態度をとるホットロディマス、それを感じてはいるもSARAは素直に笑顔を返した。仲間を気遣うSARAの笑顔にダイノボットが顔をよせて、甘えるようになで声をあげる。
「あなたも助けてくれてありがとう・・・。まだお名前、聞いてなかった。」
SARAの問いにダイノボットが首をかしげる。ディセプティコンに生み出され、殺戮マシーンとしてダイノボットという呼称を与えられていたものの、本能のままに暴れていた彼は個体名という概念を持っていなかった。
「お名前無いの・・・?じゃあ私がお名前あげる。・・・そう、グリムロック、どう?」
「……グリムロック。名前!俺、グリムロック!」
名前をつけてもらったグリムロックは嬉しそうにはしゃぐ、そこには殺戮マシーンとして生まれた狂暴な野獣の面影はすでになかった。
「グリムロック?なんか物騒な響きじゃないか?」
そう言いながら歩いてきたのは周囲の探索に出ていたブローンだ。
「これは、各時空に名前を遺す、強く勇敢な戦士の名前。」
「そうだ!俺グリムロック、強くてゆうかん!」
尻尾を振りながらグリムロックという言葉を何度もつぶやく恐竜の姿に、ブローンとホットロディマスは顔を見合わせ肩をすくめた。
「まあ、本人が気に入ってるようならいいんだけどよ。」
そう言うとブローンは改めて現状を確認するように語り出す。
「調べたところここは第10BS時空のようだ。この惑星には人類はいないようだが、何体かのトランスフォーマーは存在して争いあってるらしい。今のところ近くに敵と思われる気配はないようだが、しかし問題はある。」
ブローンが自分の腕を見ながら言葉を続ける。
「どうもこの惑星全体に強力なエネルギーが巡っているようで、そいつの影響なのかここの大気は俺達のボディを錆びさせるようだ。あまり長居はしない方がいいかもな。」
それを聞きホットロディマスも口を開く。
「以前俺が行った第9BW時空も同じようなことがあったな、あの時の惑星とここが同じ場所なのかは今の俺達に確認する術はないが・・・。」
SARAが何かを感じ取るように緑繁った地面をさする。
「この大地にマグマのように流れる強力な力…アンゴルモアエネルギー。これは扱う者の意識によって、命を育む善き力にも破滅を生む悪しき力にもなる危険なもの・・・。」
「ではそれが君の集めるべきこの世界における大いなる力なのかいSARA?」
ホットロディマスの質問にSARAは少し考え込むように答える。
「少しづつだけど、このエネルギーのおかげで私の力は回復させられそう。・・・でも今、この惑星に何か大きな危機が迫っているみたい。その影響でアンゴルモアエネルギーは活発化してて、刺激を与えるのは、危険。」
「この時空も色々大変ってことか、だがそいつはここの世界の連中がなんとかすること、今の俺達がどうこうすることじゃないな。問題は・・・メガトロンだ。」
ブローンがつぶやいたその名前に皆の表情が一瞬強張る。規格外のパワーを得て戻ってきた破壊大帝…その恐ろしさは皆が身を持って体験させられた。
「やっこさんは俺達と同様SARAのエネルギーを感じられるようだからな。きっとこの時空へ来て、すぐにここも見つかる可能性がある。」
ブローンが不安そうにつぶやくと、SARAは穏やかに語る。
「アンゴルモアエネルギーが活発化し、この惑星には今大きなエネルギーの乱れが起きていて危険だけど、そのおかげでカモフラージュになってると思う。このエネルギーの渦から弱った私の力を感じ正確な場所を探り出すのは、きっとメガトロンでも難しい。」
それを聞いて少し表情を緩めながら、ホットロディマスは空を見上げる。
「とにかく今はSARAの体力の回復を待って、クラウド時空に戻って仲間達と合流するしかないな。念のためすでに時空間通信で俺達の居場所も伝えてはある。もっとも、俺達が時空移動した後オートボットの皆・・・オプティマス司令官がどうなったかはわからないが…。」
それを聞きSARAは悲しそうにうつむく。
「とっさにロディマス達を守らなきゃと思って、私の周りにいた皆しか逃がすことができなかった・・・。ごめんなさい。」
「君のせいじゃないさSARA。むしろ命の恩人だ、君には何度も助けられるな…。」
ホットロディマスが少し慌てたように言う。するとSARAは思い出したように問いかける。
「もう一人、オートボットの仲間が一緒に時空移動したと思うのだけど。」
「ああ、あいつなら・・・。」

SARA達が身を隠す場所の近く、樹々に囲まれた薄暗い洞窟の中に大柄な影があった。
「ふう、これでとりあえずは動ける。」
それはホットロディマス達と共にこの時空に飛ばされてきたオートボット戦士、ロードバスターであった。ヘルワープとの戦いで手傷を負っていた彼であったが、携帯していた医療キットを使い自らの手で応急処置を完了していた。彼が所属するオートボット特殊戦闘部隊レッカーズは時空界におけるあらゆる困難を解決することが任務であり、こうした非常事態への対処も慣れたものであった。だが・・・。
「アイアンフィスト・・・、くそ!自分がいながら目の前で仲間を…!」
数々の戦場を共に越えてきた仲間を失った心の傷は、そうそう癒されるものでは無かった。ふと、洞窟の入口から気配を感じとっさに銃を構える。するとその先からは場の空気を和ませるような豪快な声が響いてきた。
「おいおい、俺だよブローンだ。黙って入ってきたのは悪かったがノックしようにも扉が無かったんでな。」
その声に一瞬表情をゆるめるも、再度銃を構え直すロードバスター。その銃口はブローンの隣にいた恐竜型ロボへと向けられている。
「記録を見たぞ、その獣は確かメトロポリスを襲ったディセプティコンの一味じゃなかったかブローン?」
「俺、獣ちがう、俺グリムロック!」
尻尾を地面に叩きつけながら抗議するグリムロックをなだめながらブローンは答える。
「確かにこいつは元々ディセプティコンだったが、今は俺達の心強い味方だ。この子のおかげでな。」
それに促されるように前に出てきた少女へロードバスターは視線を向ける。
「私はSARA・・・。助けにきてくれてありがとう、ロードバスター。」
SARAのか細い声にロードバスターは視線をそらし、少し落ち着かないような態度でつぶやく。
「・・・すまない、今の自分は少し冷静さを欠いている。もう少し一人にさせてくれ・・・。」
だがロードバスターの足元へSARAはゆっくりと近づき、少し笑ってみせながら話しかける。
「ロードバスター、あなたと少し、お話したい。」
その言葉にロードバスターは驚いたような少し困ったような、戸惑いの表情を浮かべた。

荒れた岩肌が露出した山脈、そこからマグマのように流れ出るアンゴルモアエネルギー。それを採取する装置につながれた巨大な宇宙船…艦首に禍々しい顔のようなデザインが施されたまさに要塞ともいえるその内部で、静かに向き合うトランスフォーマー達がいた。
「なかなか良い居城だな、お前がこの軍団の支配者か?」
白銀の鎧に身を包んだ威風漂う戦士・・・クラウド時空よりSARAを追い時空移動してきた者、メガトロンだ。傍には側近であるショックウェーブとサウンドウェーブが静かに佇んでいる。
それに対自するように立つ者・・・メガトロンより小柄なサイズながらも威厳を感じさせる紫のボディ、歯を食いしばった表情が印象的なそのトランスフォーマーが低い声で答える。
「メガトロン・・・と言ったか。虎の威を借るようにその名を名乗るものは後を絶たんな・・・。まあいい、いかにも私がデストロン破壊大帝のガルバトロンだ。」
続いて、ガルバトロンと名乗った者の隣に立つ機械の怪獣のような存在が声を荒げる。
「俺様はギガストーム!お前ら!ずかずかと俺達の基地に上がり込んで一体何者だ!?態度がでかいんだぞ!」
それを煩わしそうに制しながらガルバトロンが問いかける。
「どこから来たのかは知らんが、この星と我らに何の用だ?メガトロンよ。」
メガトロンは不敵に笑みを浮かべながら答える。
「何、少し探し物があってな。それを捜索する前に挨拶をしとかねばと思っただけよ。」
「おお!それはいい心がけなんだな!」
無邪気にはしゃぐギガストームを無視し、ガルバトロンが更に問い続ける。
「探し物とは何だ?」
「大したものではない、この惑星を巡る強大なエネルギーに比べればちっぽけな物よ。」
そう言うとメガトロンは背を向け歩き出す。
「ではこれで失礼する、お互い『デストロン』同士無用な衝突は無いことを願うぞ。」
そう言い残し、メガトロンはショックウェーブとサウンドウェーブを連れて部屋から出ていった。
「兄ちゃん!もっとガツンと言ってやらなくてよかったのかい!?」
ギガストームがガルバトロンへ不満そうに抗議する。だがガルバトロンはそれに答えず思案していた。デストロンリーダーであり強者であるガルバトロンは感じとっていた、あのメガトロンと名乗った物が只者ではないことを。そんな奴が探している物とは・・・。
「ギガストーム、惑星ガイアに張り巡らせた我らの諜報網をフル活用するのだ。どんな小さな異物も見逃すな。」

デストロン要塞の外、切り立った崖の上にクラウド時空のディセプティコン達数名が立ち、内部に入っていったメガトロン達が出てくるのを待っていた。
「これが・・・別の時空世界・・・。」
デッドロックは目の前に広がる光景に息を飲んでいた。広大に広がる森、吸い込まれそうな空の青、ボディを抜けて行く穏やかな風。彼にとって初めての時空移動・・・それはクラウド時空のアンダーグラウンドで育った身に大きな衝撃を与えた。
「チッ、前に行った時空もそうだったが、泥臭くてチンケなところだぜまったくよお。」
そんなデッドロックの心境も知らずスタースクリームが愚痴をこぼす。
「だがよスタースクリーム、この広い空を俺達で独占して思いっきり飛んだら気分がいいと思うぜ。お前もそう思うだろサンダークラッカー?シャァァ…。」
「あ・・・ああ、まあな・・・。」
ヘルワープの言葉にサンダークラッカーはどこか他人行儀な態度で答える。すると要塞内部よりメガトロン達が飛び出すのが見えた。
「お?終わったみてえだぜ。まったくメガトロンの奴、こんな時空の連中なんてさっさと全滅させちまえばいいのに、臆病風に吹かれたのかねえ?」
「メガトロン様にはお考えがあるんだろう。もっとも命令とあれば俺の力でいつでもこの時空を滅ぼしてやるがな。」
物騒な物言いをしながら飛び立つスタースクリームとヘルワープに続き、サンダークラッカーとデッドロックもメガトロンの後を追う。
「メガトロン様、あのデストロンという連中、危険かと・・・。」
「よいショックウェーブ、今は事の推移を見守ればいい。」
メガトロンは薄く笑みを浮かべ部下のディセプティコンと共に地平の果てへ飛び去って行った。

ジャングルの中にある湖のほとり、そこに動物達と共にSARAは静かに座り体を休めていた。傍には寄り添うように体を丸めるグリムロック、そして・・・。
「ロードバスター、なぜ、車の格好でいるの?」
「じ・・・自分のことは構わないでくれ。」
ビークルモードである装甲車の状態でロードバスターは居心地悪そうにしていた。そんな彼にSARAは言葉を続ける。
「私、あなたのこと何も知らないから…、お話できれば、嬉しい。」
ロードバスター達レッカーズは任務で各時空を渡り続けるためクラウド時空に待機することはほとんどなく、話題には聞いていたSARAと彼がこうして対面するのは実質初めてであった。だがそれ以上に・・・。
「やっぱり、あなたの友達を置いてきてしまったことを、怒ってる・・・?」
「そ、それは関係ない!ただ・・・。」
ビークルモードのままロードバスターは言葉を選ぶように話す。
「自分は・・・戦いしか能のない不器用な戦士。レッカーズとして時空世界のために戦うことが誇り。だがそれ以外は…苦手で…。」
自分をまっすぐ見つめるSARAの瞳に困ったようにロードバスターは続ける。
「こんな・・・小さくか弱い姿をした者と、どう接していいのか・・・正直自分にはわからないんだ…。」
自分の言った言葉に後悔するようにロードバスターは口をつぐむ。戦士として生きてきた彼には、目の前の少女…ディセプティコンの獣さえも心を許す安らぎの雰囲気は、自分が生きてきた世界とまったく別の物であったからだ。だがそんな彼の車体に、SARAはそっと体を寄せる。ロードバスターは驚き思わずエンジンを吹かすも、SARAは穏やかに語りかける。
「こうして、そばにいるだけでいいの。そうして少しずつ、あなたのことを知りたい。」
「じ、自分は・・・。」
そのまま言葉はなく、静かな時間が流れる。風に揺れる樹々のざわめき、水のはねる音。ロードバスターはまるで時が止まったような不思議な、未体験の感覚に包まれた。
だが、そんな時間も長くは続かなかった。グリムロックが何かに気づき空へ向け唸り声をあげ出したのだ。SARAとロードバスターもそれに気づき空を見上げると、そこには一匹の蜂が飛んでいた。だがその蜂は昆虫にしては大きく、何より異様だったのは半分機械でできてるような姿をしていた。
「ガルバトロン様!こちらダージガン、見たこともない怪しい連中を発見しましたで!」
どこかへ通信を入れるその声を聞くと同時に、ロードバスターが叫ぶ。
「SARA!乗れ!」
SARAが乗るとビークルモードのロードバスターは真っ直ぐジャングルの中へと走り出す。グリムロックもそれに続き強靭な脚力でついて行く。
「あ、あかん!逃しはせえへんで!」
ダージガンと名乗ったそのサイボーグ蜂が猛スピードで追跡する。
「ロディマス!ブローン!妙な奴に見つかった!恐らくこの時空のトランスフォーマーだ、とにかく一度合流してくれ!」
ロードバスターが二人に通信を送るも、ホットロディマス達からの返事はない。
「何だ?二人は隠れ場所で待機してるはずなのに・・・うわ!?」
追跡者ダージガンのミサイル攻撃が降り注ぐ、ロードバスターとグリムロックはそれをかろうじて回避しながら駆け続ける。だが次の瞬間、樹々の隙間から一匹の恐竜が飛び出しグリムロックへと食らいつく。
「ぐあ!?」
たまらず転倒するグリムロック、その体にはグリムロックよりもだいぶ小柄ではあるが、半分機械のサイボーグ恐竜と言える存在が食らいついていた。
「何やっとんねんダージガン!きちんと捕まえんかい!」
「うっさいわ、お前こそ来るのが遅いんじゃスラストール!」
スラストールと呼ばれたそのサイボーグ恐竜がダージガンへ文句を言うために口を離したことにより、グリムロックはすぐさま尻尾でスラストールを払いのける。
「グリムロック!」
SARAが叫ぶ、それはロードバスターの心を揺さぶった。本来なら元ディセプティコンの獣など捨ててSARAを安全な場所まで連れていくのが最優先、だが・・・。
「・・・くそ!トランスフォーム!」
ロードバスターはロボットモードへ変形し乗せていたSARAをその腕に抱え、銃を構えグリムロックのそばへと駆け寄る。
「なんややたら図体のでっかい連中やな。まあええわ、もうすぐや。」
ダージガンがそう言ったタイミングで、森の中から新たな巨体が転がり込んできた。だがそれはSARA達が見慣れた者達であった。
「ロディマス!ブローン!」
通信が通じなかった二人が傷だらけの姿で現れたのだ。驚き二人のそばにSARAが駆け寄る。なんとか立ち上がりながらブローンがつぶやく。
「す・・・すまねえ、油断してて不意打ちを受けちまった。」
「くそ・・・本調子ならこんな連中に・・・!」
悔しそうに自分たちが飛び出してきた方向を睨むホットロディマス。その視線の先には二つの影。
「あら、ダージガンにスラストール、あなたたちも目標を見つけてたの。以外とやるじゃない。」
それは言うならばサイボーグ鮫とサイボーグ犬とも言うべき異様な出で立ちであった。
「ヘルスクリーム!マックスビー!手柄を奪わせはせんで!」
スラストールがそう叫ぶも、ヘルスクリームと呼ばれたサイボーグ鮫はうんざりとした様子で応える。
「今はそんなくだらないこと言い合ってる場合じゃないわよ、マックスビー!奴らを逃がさないように囲むわよ。」
「マックスラジャー!」
マックスビーと呼ばれたサイボーグ犬が駆け出し、4体のサイボーグビーストは瞬く間にSARA達を包囲する。ロードバスターはSARAをかばうように抱えながら銃を構える。
「気をつけろ・・・、連中は恐らくこの時空のディセプティコンだ。あんな調子だが、手ごわい・・・。」
ホットロディマスの言葉に緊張が走る。すると今度は突如地響きが起きた。それは地震と言うより何か巨大な物が近づいてくるという感じで、徐々に激しくなり、森を裂いてその巨体は現れた。
「お前たち!よく見つけたな!ほめてやるんだぞ!」
機械怪獣…ギガストームが巨体を揺すらせながら吠えるも、その隣に浮いているリーダーに対しサイボーグビースト達はうやうやしく頭を下げた。
「ほう・・・確かに見たことのない連中だ。我はデストロン破壊大帝ガルバトロン。貴様ら一体何者だ、どこから来た。」
ガルバトロンはSARAとオートボット達を興味深そうに見据えながら、威圧感を感じさせる声で問いかける。
「デストロン・・・この時空ではディセプティコンではないのか。だが敵には変わりないようだ…どうする・・・。」
ロードバスターが周囲を見回し思考を巡らせる。傷ついたホットロディマスとブローン、元ディセプティコンの獣、そして腕の中にはSARA…。この状況を抜け出すにはどうすればいいのか。相手は4体のサイボーグビーストと巨大な怪獣、さらにガルバトロンと名乗った者は明らかに他の連中を越えた戦闘力を持ってるように感じられた。
「答える気が無いなら別によい、無力化してからゆっくり聞き出してやろう。お前達!」
「はいガルバトロン様!トランスフォーム!」
ガルバトロンの号令を受け4体のサイボーグビーストは一斉にロボットモードへと姿を変える、それはサイボーグビーストの時以上に歪で不気味な姿であった。それぞれが武器をゆっくりとオートボット達に向ける。ロードバスターも覚悟を決めて捨て身の反抗をしようと銃を構えた。だがその時、突如周囲に不気味な声が響く。
「シャァァ・・・、そこまでだ。」
ぞっとするロードバスター、忘れもしないその声。すると地面が光り、そこから飛沫をあげて漆黒の海獣が天高く飛び出した。思わずロードバスターは声をあげる。
「ヘル・・・ワープ・・・!!」

そのころ、トランスフォーマー達がいる惑星ガイアの周囲を巡る衛星・・・その内部にある一室に二つの存在がいた。
「あの見たこともないトランスフォーマー達は一体誰?!サイバトロンでもデストロンでもないみたいだけど!」
惑星の様子をモニターで見ながら、機械の体をもつ少女が慌てふためくように騒ぐ。
「ムーンも知らないムーン・・・でもあの女の子は、アルテミスよりおしとやかで可愛かったムーン。」
小さな小動物のようなロボット・ムーンがそう言うと、アルテミスと呼ばれた機械の少女が突っ込みとばかりにムーンを殴りつけた。
「いったい何が起きてるの?この戦いの行方はどうなるの?それにヘルスクリーム様があの女の子に気を引かれたりしたらどうしようー!」
「やれやれだムーン・・・。」

第四話
ー 争 奪 ー
10月16日(木)午後13:00公開

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