TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 圧 倒 ー

第二話「圧倒」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

「シャァッ!くたばりやがれぇい!」
銃口と化したヘルワープの左手からエネルギー弾が発射され、直後拡散しオートボット特殊部隊レッカーズの五人へとまとめて襲いかかった。
「各個散開!」
ロードバスターが叫ぶとレッカーズの面々は見事な動きで回避し、ヘルワープを包囲すべく駆け出した。
「突如変化したのには驚いたが・・・どんな相手だろうとたった一人で自分達に敵うと思うな!」
ロードバスターの肩に装備されたキャノン砲が火を吹く、その砲撃を素早い身のこなしでかわしながらヘルワープは不敵に笑っていた。

「さて・・・、では連中の相手はヘルワープに任せてこちらは目的を果たさせてもらうとするか。」
そう言うとメガトロンは再びゆっくりと歩み出した、その視線の先には依然意識を失ったままのSARAの姿。だがそれをさえぎるように大柄なシルエットが躍り出る、オートボット怪力戦士ブローンだ。
「ほう?どうやら貴様もSARAの力の片鱗を受けているようだな。だがだからこそ解らぬか?我には到底敵わぬということが。」
ブローンを値踏みするように見据えながらメガトロンが告げる。その言葉にわずかに動揺するも、それをかき消すようにブローンは叫ぶ。
「司令官から聞いてはいたが、確かにお前さんは以前にも増してとんでもない化物になったようだな。だが戦いってのはやってみなきゃわからないぜ!?」
「愚か者めが・・・。」
その瞬間、メガトロンめがけてブローンの背後から一つの影が飛び出した。
「む・・・!?」
その影はそのままメガトロンの右腕へと食らいつく、今やSARAを守る守護獣となった恐竜型戦士のダイノボットだ。
「獣が・・・、我に逆らうか!」
メガトロンは腕にかぶりついたままのダイノボットを大地へと激しく叩きつける、だがダイノボットは苦悶の表情を浮かべながらも決して離そうとはしない。
「恐竜野郎!うおおお!」
弾かれたようにブローンもメガトロンへと飛びかかる。だが右手を鉄球へと変え殴りかかるも、その一撃はメガトロンの左腕によって容易く受け止められてしまった。
「な・・・なんだと!?ぐわ!」
ブローンが驚き気を緩めた瞬間、メガトロンは腕に食らいついたダイノボットを振り上げブローンへと叩きつけた。その衝撃にさすがにダイノボットもメガトロンを離して転がり込んでしまった。

ヘルワープ対レッカーズの戦いも引き続き激化していた。ロードバスター達が抜群のコンビネーションで徐々にヘルワープを追い詰めるも、ヘルワープはその包囲を脱するべく上空へと飛び上がる。だがそれを追うようにレッカーズのホワールとトップスピンが空中へと舞い上がった。
「飛べるのがテメェらだけの特権だと思うんじゃネェーヨディセップ野郎!気持ち悪ぃテメェはこの場で死刑だ!」
ホワールが叫び銃撃を放つも、刹那ヘルワープはトランスフォームし空中で軌道を変え回避する。その姿は今までのスカイワープのような航空機ではなく・・・。
「な、なんだ・・・怪物!?」
それは機械のサメとでも言うべき異形の姿であった。だがロードバスター達が真に驚いたのは、その姿が一瞬で視界から消えてしまったことであった。
「ばっ・・・バカな!どこへ消えた!?自分達五人が揃って標的を見失うなど・・・!」
不気味な静寂が走る。だが次の瞬間、その静寂はホワールの叫びで引き裂かれた。
「アガァァァ!?」
突如背後から現れたヘルワープが鋭いヒレでホワールの体を切り裂いたのだ。たまらずバランスを崩し墜落するホワール。ロードバスター達はすぐに銃を構えるも、再びヘルワープの姿は見えなくなっていた。続いてトップスピンもその鋭いヒレの犠牲となり地面へと落ちる。
「なんだ・・・?今奴は間違いなく何もない空間から現れ、そして消えて行った・・・。空間を越える瞬間移動能力だというのか・・・?」
それは元来スカイワープが持っていた特殊技能、短距離ながら空間を跳躍できる恐るべきワープ能力である。以前はエネルギーの消費が激しいこともあり多用は出来ないものであったが、メガトロンよりSARAの力の片鱗ともいえる強大なエネルギーを受けヘルワープとして生まれ変わった彼は、その弱点が無くなり本能のまま自由にワープ能力を繰り出すことが可能となっていた。
「周囲の空間を警戒しろ!どの方向から出てくるかわからないぞ!」
地上に残ったロードバスターとツインツイスト、アイアンフィストの三人が空中を慎重に見張る。その表情には未知なる敵の能力への恐怖が表れていた。
「へへヘ・・・最高の気分だぜ。慌てふためく獲物を追い詰める狩りってのはよぉ・・・。」
その言葉にロードバスターはぞっとした、それは警戒している空中ではなく自分の足元から聞こえてきたのだ。視線を落とすとそこには地面から顔の上半分だけ出し覗きこむ機械のサメの姿があった。
「う、うわあああ!?」
慌ててロードバスターは足元へと銃撃を放つ、だがそれは何もない地面を虚しくえぐるだけであった。
「お・・・おい、どうしたんだいロードバスター・・・?」
アイアンフィストが声をかけるも、ロードバスターは絶句した。アイアンフィストの足元の大地から紫の背ビレが生えてきたのを見たからだ。 「アイアンフィスト!危な・・・」
その言葉と同時に、大地から飛び出した機械のサメ・・・ヘルワープはアイアンフィストのボディに食らいつき、空中へと飛び上がった。一瞬の出来事だったがまるでストップモーションのようにロードバスターの目にはその光景が焼き付けられ、そのままアイアンフィストの姿はヘルワープと共にまるで波飛沫のようなエネルギーの飛沫を上げながら地面へと消えた。
「く・・・くそ!アイアンフィスト!どこへ連れてかれた!?」
ヘルワープが潜って行った地面を手で激しく探りながらロードバスターが叫ぶ。その行為が無意味なものとわかっててもせずにはいられなかったのだ。
「シャァァ・・・いい顔だぜ・・・。」
その声を聞きロードバスターが振り向くと、ヘルワープはロボットモードの姿で悠々と大地に立っていた。
「き・・・貴様!アイアンフィストをどうした!」
「ワープの最中に捨ててきちまったよ、俺のワープは異空間を通過するからな。」
面倒臭そうに話すヘルワープの言葉に、わなわなと怒りに震えるロードバスター。
「あ・・・あいつはどうなったんだ・・・?」 「知らねえよ、だがもう二度と出てこれねえのは間違いない。異空間、いや・・・地獄から、な。」
刹那ロードバスターはビークルモードへと変形しヘルワープへ向け飛び出す、だがヘルワープは再びワープで姿を消した。
「出て来い!絶対に許さんぞディセプティコンめ!!」
怒りの声を上げるロードバスター、だが周囲にヘルワープの笑い声がこだますると、空中からヘルワープの拡散ビームが地上のツインツイストとロードバスターへと向け雨のように降り注いだ。
「うわああああ!?」

「ぐああああっ!」
レッカーズの叫びと被さるように、ブローンもまた苦悶の声をあげた。メガトロンの腕から強力な衝撃波が放たれその体を撃ち抜いたのだ。普通のトランスフォーマーでは到底耐えられないであろうその威力、SARAの力で進化した強固なブローンのボディであってもそのダメージは尋常ではなかった。
「ふむ・・・やはりこの程度が限界か。今の状態ではこれ以上の出力は我がボディがもたんな。」
メガトロンが確認するように自分の腕を見る、その腕は自ら放った衝撃波の威力でボロボロになっていが、すぐに自己修復した。
「我が真にこの強大な力を行使するには、やはりSARAが必要なのだ。」
そこへ傷だらけのダイノボットが再びメガトロンへと飛びかかる、しかしメガトロンはそれを片手で受け止め、ダイノボットの首根っこを掴み締め上げる。
「獣は獣らしく強者に従っていればいいものを・・・、ここで処分してやろう。」
首を締める力が強まり足をばたつかせてもがくダイノボット、苦しそうにうめき声をあげる。その時、気を失い横たわっていたSARAがわずかに意識を取り戻す。
「・・・う・・・うう・・・」
それに気がついたメガトロンはダイノボットを掴み上げたまま悠々と語りかける。
「目覚めたかSARAよ。待っておれ、お前はもうすぐ我のものだ。」
その時苦悶にゆがむダイノボットの紅い瞳にSARAの姿が映り、彼のスパーク・・・殺戮マシーンと呼ばれた彼の中に封じられていた心と呼べるものが燃え上がった。それに呼応するように、ダイノボットはトランスフォームを始める。
「何・・・?」
メガトロンが気づいた時にはダイノボットはロボットモードへと姿を変え、パーツ移動により首締めから解放された彼はメガトロンへと不意打ちの強烈なキックを食らわせた。
「フン・・・!」
メガトロンは特にダメージはない様子であったが、蹴り飛ばした勢いでメガトロンから離れたダイノボットはSARAの元へ近寄り、彼女をかばうように立つ。
「俺、この子、守る!」
「SARA!」
次いでブローンもダメージを負った身体にムチを打って駆け寄り、SARAの小さな体を抱き抱える。
「恐竜野郎、お前さんトランスフォームできたのか・・・それにちゃんとしゃべれるんじゃねえか。」
その様子を静かに睨むメガトロン。その背後、地下への大穴から暗く低い声が聞こえてくる。
「・・・抹消したはずのトランスフォーム機能、それに発声機能も戻るとは・・・。戦闘中の衝撃によるバグが妙な作用を生んだか。」
穴から静かに姿を現したのは紫のボディをもつ単眼の兵士、ショックウェーブだ。彼は自ら生み出し調整したダイノボットの予想外の変化を冷静に分析する。
「いや、あれこそあの小さき姿となったSARAの起こした、奇跡と呼べる新たな力なのかもしれんぞ。」
どこか楽しげにそう言うメガトロン、その言葉にショックウェーブはちらとメガトロンを見るも、それ以上何も語ることは無かった。

「ぐああっ!」
SARAを守るように立つブローンとダイノボットの前に大柄な戦士…ロードバスターが吹き飛ばされたように転がり込んできた。全身に銃撃の跡と斬り裂き傷を負わされ痛みに苦しむ。
「オートボット特殊部隊レッカーズ・・・ご大層に出て来た割に大したことない連中だぜまったくよぉ。」
メガトロンの隣に静かにワープアウトし現れたヘルワープが嘲笑うようにつぶやく。ホワール、トップスピン、ツインツイストら百戦錬磨のレッカーズも、今やヘルワープに負わされたダメージに身動きできず倒れ伏していた。
「なんだなんだ、オートボット共はすでに全滅か?せっかく俺様の新たな力をメガトロン様にご披露しようと思ったのによ!」
緊張に包まれた空気に似つかわしくないほどわざとらしく陽気な声が響く、地下からエネルギーを補充されたスタースクリームがサウンドウェーブと共にやってきたのだ。
「さ・・・最悪だぜこいつは・・・!」
ブローンが嘆くのも無理はなかった。目の前には圧倒的戦闘力を持つメガトロン、それに側近のショックウェーブとサウンドウェーブ、レッカーズを一人で全滅させた新たな脅威ヘルワープ、更に曲がりなりにもSARAの力を受けたボディをもつスタースクリーム…。現在知る限りのディセプティコン最強布陣が集結しているのだ。
「ああん?てめえは散々俺様の邪魔をしてくれたブローンじゃねえか。ちょうどいい、いつぞやの恨み晴らさせてもらうぜ!」
スタースクリームが意気揚々とナルビームを構えようとするも、ヘルワープがそれを制する。
「邪魔をするなスタースクリーム、今は俺の狩りの時間だ。」
「あ?お前誰だよ?・・・もしかしてスカイワープか?おいおいずいぶんと物騒な面構えになったな、俺様みたいにイカしたパワーアップはできなかったのか?」
スタースクリームの軽口にヘルワープがギロリと睨む。両者の間に険悪なムードが漂うも、メガトロンはそれを気にかけずSARAへと声をかける。
「SARAよ、もはやこの場でオートボットに勝ち目はないとお前にもわかるであろう。」
意識を取り戻したSARAがゆっくりと上半身を上げ視線を泳がせる、周りにいるオートボットはブローンとダイノボット、それに傷だらけのロードバスター。とてもディセプティコンの幹部軍団と戦える様子ではなかった。
「やめ・・・て・・・。もう・・・みんなを傷つけないで・・・。」
悲しさをたたえた表情でSARAが願うようにつぶやく、その儚い願いはディセプティコン相手には本来なら到底聞き入れられずに踏みにじられるものであったが、メガトロンの口から出た言葉は意外なものであった。
「そいつらを皆殺しにしてお前を手に入れることは容易いが・・・、SARAよ、お前が自ら我が物となるならそのオートボット共を見逃してやってもよい。」
その言葉にスタースクリームやヘルワープは驚き、ショックウェーブとサウンドウェーブは変わらず無表情のまま事態を見据えていた。
「だ・・・騙されるかよ!お前の言うことなど信用できるか!」
ブローンが食ってかかるも、メガトロンは薄く笑ったまま静かに語る。
「貴様などには聞いておらん。SARAよ、悪い話ではなかろう?」
その言葉を遮るようにロードバスターが叫び銃を構える。
「じ・・・自分はレッカーズ戦闘員ロードバスター!ディセプティコンに屈するなら戦って死を選ぶ!」
だが傷だらけの体で立ち上がるロードバスターのボディにSARAがそっと手を触れ、その悲しげな瞳と目が合い、ロードバスターは言葉を失う。SARAはそのままゆっくりと、だが凛とした態度で立ち上がる。ブローンやダイノボットもそのSARAの雰囲気に声をかけられずにいた。
「いい子だ、そのまま我が元へ来い・・・。」
メガトロンが目的達成を確信したその時、前に歩み出そうとしたSARAをかばうように一つの影が立ちはだかった。全身にダメージを受けるもその胸に抱く炎のエンブレムのように瞳に戦意を燃やし続ける者、ホットロディマスだ。先ほどまでメガトロンにやられたダメージでコロシアムに倒れ伏していたが、ここにきて意識を取り戻し不屈の闘志でなおSARAを守らんと立ち上がったのだ。
「サ・・・SARAには手出しはさせんぞ・・・メガトロン・・・!」
だがその姿はどう見ても戦える状態ではなかった。メガトロンは表情を変えることなく冷たく輝く刃を引き抜く。
「若造が・・・我とSARAの間に立つな!」
振り上げた太刀をホットロディマスの脳天へと容赦無く振り下ろす、まさにその体が一刀両断にされんとするその瞬間・・・
「だめぇぇ!!」
SARAの叫びが響き、周囲が激しい光と衝撃に包まれる。
「む・・・!」
思わず目を背けるディセプティコン達。それが収まると、SARAとその周囲にいたホットロディマスとブローン、ダイノボットにロードバスターの姿は忽然と消えていた。
「・・・時空移動か。あの状態で瞬時にディメンションゲートを開くとは、無茶をしおるわ。」
空を斬った刃を納めながら、特に困惑した様子もなくメガトロンはつぶやいた。
「もはや我とSARAは一心同体、例えどの時空に隠れようとも逃げ切ることはできん。」
そんなメガトロンへ沈黙を守っていたショックウェーブが進言する。
「メガトロン様・・・すでに時空移動システムは私のボディに組み込んであります。今のメガトロン様のお力を使えば自由にディメンションゲートを開放することが可能です。早速全時空界の支配へと動き出すべきかと・・・。」
「そ・・・そうですよメガトロン様!もはや我々の邪魔をするものはいません!ついにメガトロン様が時空界に君臨する時が来ましたぜ!」
同意するようにスタースクリームも声をあげるも、メガトロンは二人を鋭い視線で睨みつける。
「・・・何度も言わせるな、時空界の支配など最早いつでもできる。今はSARAを我が物とすることが最優先だ、それも時間の問題だがな。」
そのメガトロンの凄みにスタースクリームは言葉を飲み、ショックウェーブもそれ以上何も言うことはなかった。
「さあ、時空移動の準備をせよショックウェーブ。」
命令を受けショックウェーブはブラスターモードへと変形、メガトロンがそれを構えるとメガトロンの腕を通じショックウェーブへと強大な時空エネルギーが流れ込む。
「見えるぞSARAよ・・・お前の居場所が。」
するとショックウェーブの砲口からエネルギーの塊が発射され、それはすぐに弾け目の前の空間に時空移動の扉・・・ディメンションゲートを生み出した。

「メ・・・メガトロン様!」
ふいに自分を呼ぶ声に目を向けるメガトロン、そこには一人の若き兵士が立っていた。
「ほう、まだ動ける者がいたか。確かお前は・・・デッドロックだったか。」
「メガトロン様、俺も時空を越えるあなたの旅に連れて行ってください!ク…クラウド世界だけでなく、別の時空のボッツもこの手で始末したいんです!」
デッドロックは懇願する、だがその言葉は彼の本心ではなかった。オートボットを殺すことだけを生き甲斐に過ごしてきた彼の心中も、ここしばらくの戦いの中で大きく揺らいでいた。この自分でもわからない迷いが、時空を越えることで何か掴めるかもしれないと思ったのだ。 「構わん、ついてこれるなら来るがいい、動ける部下は拒まん。」

「ほらよ、立てるかサンダークラッカー。」
事態に圧倒され腰を抜かしへたり込んでいたサンダークラッカーにヘルワープが手を差し出す、そのトゲだらけの手に一瞬ためらいながらもサンダークラッカーはヨロヨロと立ち上がった。
「すまねえスカイワープ、いや・・・ヘルワープだったか・・・。」
「メガトロン様がご帰還なさって、いよいよ俺達ディセプティコンの時代が始まるぜ、シャァァ・・・楽しみだぜ。」
相棒だったスカイワープの新たな姿、ヘルワープの不気味な笑みにサンダークラッカーは複雑な表情を浮かべる。
「まったく情けない野郎だぜ、俺様達と違ってパワーアップもしてねえんじゃ役立たずかもしれねえが、まあ元チームのよしみで連れて行ってやっても構わねえぜ。」
スタースクリームの言葉にお前とチームだった覚えはないと心中毒づくも、このままクラウド世界に取り残されても後が無いと理解しているサンダークラッカーはヘルワープ達と共にメガトロンについて行くことを決めた。

「ま・・・待て・・・メガトロン・・・!」
ディメンションゲートへと突入せんとするメガトロンの耳に聞き慣れた声が届く、以前は不愉快そのものであったその声も、今や彼の感情に影響を与えるものでは無くなっていた。
「よくここまで這い上がってこれたな、オプティマスよ。」
オートボットの偉大なるリーダー、オプティマスプライム。だがかろうじて地上へと這い上がってきたものの、傷だらけのその体は今や気力のみで立っている状態であった。銃を構えようとするもその照準は定まらず宿敵を捉えることは叶わない。
「もはやお前は我にとって何ら価値はない、そのままこのアンダーグラウンドの地で朽ち果てるがいい。」
その言葉が聞こえたかどうかは不明だが、オプティマスは銃を撃つこともなく力尽き膝をつく。
「メ・・・メガトロン様・・・。」
新たにメガトロンを呼ぶ声、それは満身創痍のアストロトレイン他数名の生き残ったディセプティコン兵士達。
「お待ちください・・・どうか我々を置いていかないでください・・・。」
「動けぬ兵に価値は無いとは貴様の言葉であったなアストロトレイン。我が覇道についてこれぬならここがお前の終着駅であったということだ。」
そう冷たくいい放つと、メガトロンはディメンションゲートへと進んで行き、続いてサウンドウェーブとショックウェーブ、スタースクリームにヘルワープも時空の扉をくぐる。残されたディセプティコン達へ後ろ髪をひかれつつもサンダークラッカーとデッドロックもゲートへと吸い込まれていき、直後ディメンションゲートは消滅した。
「メ・・・メガトロン様ぁ!」
嵐が過ぎ去ったように急激に静寂につつまれるコロシアム。オートボット・ディセプティコンの多くの戦士達が倒れる中、残されたアストロトレインの叫びが虚しく響き渡る。
その声がかろうじて耳に届いたのを最後に、倒れ伏したオプティマスの意識も闇に沈んでいった。

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