TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 対 決 ー

第三話「対決」

Illustrated by nagi miyako
Story by makoto wakabayashi

「お前は・・・確かに俺様の手で始末したはず・・・ご、ゴーストか?」
「バカ言うな、ちゃんと足もあるぜ・・・っと!」
そう言いながらブローンはスタースクリームに飛びかかり、強烈なパンチを繰り出した。
「ぐうっ・・・!」
スタースクリームは両腕で受け止めたものの、予想以上の威力に耐えきれず後方へ大きくはじき飛ばされた。
「大丈夫ですか、司令官?」
倒れたオプティマスに手を差し伸べるブローン。
「おお・・・これは夢か・・・?失ったと思った友が今再び私の前に立っているとは・・・。」
「間違いなく現実ですよ、生き残れとご命令したのは司令官でしょう?」
オプティマスはブローンの手をとりなんとか立ち上がったものの、喜びと驚きのあまりしばし彼の姿に見入ってしまった。目の前のトランスフォーマーは確かに今まで生死を共にしてきた仲間のブローンである、だがそのボディは今までの小柄な物ではなく、その豪快な性格と怪力に見合った力強く大柄なものへと変化・・・いや、進化していた。
「確かに俺は一度死んだのだと思います・・・だがあの子が俺に再び立ち上がる力をくれました。」
「あの子・・・?まさか!」
そのオプティマスとブローンの会話をさえぎり、スタースクリームが吠える。
「死に損ない野郎が、今は新破壊大帝スタースクリーム様が主役のステージだぜ?俺様を無視してくっちゃべってんじゃねえや!」
「心配しなくても相手をしてやるさ、お前の薄汚い手から「SARA」を救い出してやらにゃあならないからな!」
そう言ってブローンはスタースクリームのボディ、胸のキャノピーの奥で気を失ったまま閉じ込められている機械の少女「SARA」を指差す。
「ブローン!お前・・・彼女のことを知っているとは・・・やはりお前を救ったのは・・・」
「やれるものならやってみやがれ!」
苛立ちの声を上げ、スタースクリームは腕のナルビームキャノンを連射した。
「司令官!お下がりください!」
オプティマスをかばうようにブローンが腕を交差し頑丈な装甲部分で光線を受け止める、並のトランスフォーマーなら一撃で風穴を開けられてしまうほどに強力になったナルビームキャノンであるが、今のブローンのボディはそれにさえも耐えうるものとなっていた。
生まれ変わった部下の強固さに驚きつつも、傷ついたオプティマスは言われた通りいっ たん後退し、ラチェット達と合流する。
スタースクリームはナルビームキャノンの連射を止めると瞬時に別の姿へとトランスフォームし急発進してきた、トリプルチェンジャーとなったスタースクリームの新たな姿、装甲戦車だ。
「ぶっつぶしてやるぜ!」
そのままスタースクリーム戦車はブローンへと体当たり、だがブローンは怯まず戦車の砲身をがっちりと抱え込み、お互い組み合った状態となる。スタースクリームのキャタピラは大地をえぐりながら空回りし、対するブローンの方はしっかりと地面を踏みしめその場から動かされることはない。
「どうしたスタースクリーム、俺と力くらべしたいのか?だがいくら新たなボディになったとはいえお前さんじゃちと荷が重いんじゃあないか?」
スタースクリームはトリプルチェンジの力を得たことで、最高のスピードとパワーを手に入れたと自負していた。だがその自慢のタンクモードが目の前のオートボット一人にパワー負けしているというのは彼にとってこれ以上ない屈辱であった。
「うるせえ!図に乗るんじゃねえや!」
パワー勝負では勝てないと悟ったスタースクリームは戦車の副砲をブローンの顔に向け発射するも、間一髪体を沿ってその砲撃を回避したブローンはそのままスタースクリームの巨体を抱え上げ・・・。
「おおりゃあああああ!!」
瓦礫に向かって勢いよく放り投げた!しかしスタースクリームは激突の直前に・・・
「トランスフォーム!」
戦闘機へと姿を変え、上空へ飛び立った。
「ちっ、何も仲良く地べたで遊んでることはねえ 。空の覇者スタースクリーム様の本領を見やがれ!」
大地に爆撃が降り注ぐ。
「飛べるからって有利とは限らねえぜスタースクリーム、スピードなら俺もちょっとしたもんだ!トランスフォーム!」
ブローンはビークルモードへと変形、猛スピードで走り出した。
「さあついてこれるものならついてきな!お空の覇者さんよ!」
「逃がすかぁ!」
そのままブローンとスタースクリームは荒れたメトロポリスの大地を駆けていった。両者の戦いに見入っていたオートボット達であったが、オプティマスが我に返り指示を出す。
「ラチェット、お前たちは負傷者の救助と手当を!私はあの二人を追う!」
「し…司令官、その前に教えてください。死んだはずのブローンが何故蘇ったのか、そしてスタースクリームが捕らえていたあの小さな存在…あれは奴が言っていたように本当に「SARA」なのですか?」
事態を飲み込めず困惑した表情でラチェットが問う。
「隠していたような形になってしまってすまない。私自身もまだ半信半疑ではあるのだが・・・ここまでのあの子の起こした現象から考えるに、恐らく「SARA」であるのは間違いないだろう。」
オプティマスは思い出していた、OG時空においてディメンションゲートを開けた彼女の力・・・そして・・・
「そうだ・・・ブローンの復活も恐らく・・・」
「司令官、何かお心当たりが?」
ジャズが傷を応急処置しながら聞く。
「まえにアンダーグラウンドで「SARA」の力を得たメガトロンの攻撃により、ブローンとホットロディマスは重傷を負わされた。恐らくその時に体内に「SARA」のエネルギーが蓄積されたのだと思う。」
「確かに…ブローンとホットロディマスは原因不明の膨大なエネルギーによって身体機能に異常をきたしていました。ホットロディマスに関しては未だ意識が戻らない状態です・・・。」
医者として無力な自分を嘆くようにラチェットがつぶやく。
「私がこの世界に戻って来た時、あの子はブローンの遺体に触れていた・・・恐らくその時にブローンの体内にある「SARA」のエネルギーを安定させ、ブローンに新たな命と力を与えてくれたのかもしれない。憶測でしかないが・・・。」
だが、ブローンがよみがえったことは事実であり、オプティマスは「SARA」に心から感謝を感じていた。
それを聞きラチェットの表情も明るくなる。
「それならば、あの子に頼めばホットロディマスも目を覚ますことができるのですね!」
「ああ、だがそれだけではない、「SARA」の力が戻れば崩壊に向かうこのクラウド世界も救えるはずだ・・・だからこそ絶対にあの子をスタースクリームから取り戻さなければならない!」
オプティマスが立ち上がり、ビークルモードへと変形する。
「司令官!」
オートボット達の不安げな声にオプティマスは力強く応えた。
「心配するな、今度も必ず戻ってくる!ブローンと共に「SARA」を取り戻してな!」

崩壊に向かい荒れたクラウド世界の大地をブローンは走る。彼の新たな姿、大型のビークルモードはどんな地形でも全くスピードを落とすことなく駆け続けた。その後ろ上空から追撃するはスタースクリームが変形した巨大戦闘機 。
「虫ケラみたいにちょこまかしやがって、くたばれ!」
戦闘機の底面から砲身がせり出し爆撃を繰り出す。だがブローンは目を見張るようなドライビングテクニックで爆風の中を駆け抜ける。
「せっかくの大砲もお前さんの射撃の腕じゃ腐っちまうみたいだなスタースクリームさんよ!なら次はこちらからいくぜ!」
地形を確認したブローンは大きく方向転換し更に加速、小高い瓦礫に向かって走り出した、その先にはこちらへ向かうスタースクリームの姿。
「うおおおお!」
そのまま瓦礫をジャンプ台に利用してブローンは天高く舞い上がり、ロボットモードへトランスフォームしながら見事上空を飛ぶスタースクリームにしがみついた。
「さあ、「SARA」を返してもらおうか!」
「うわああ!?て、てめえ!離れろ!」
ローリングや急旋回を繰り返しなんとかブローンを払い落とそうとする。
「こいつ!大人しくしろっての!」
振り落とされそうになるのをこらえつつ、ブローンは拳を握りスタースクリームのボディを殴打した。
「ぐわああ!てめえ・・・調子に乗るなよ!」
スタースクリームは急降下、着地直前で裏返りブローンを地面へと叩きつけ擦り付ける。
「うおおおお!?」
そのままロボットモードへとトランスフォームし、ブローンの上へ馬乗りにまたがり顔面へナルビームキャノンを突きつける。
「俺様を怒らせやがって・・・もう一度地獄へ落ちやがれええ!!」
響く銃声、だがそれはナルビームキャノンのものではなく、スタースクリームを背後から撃ち抜く銃撃の音であった。
「おわああああ!?」
無防備な背中を撃たれたまらず吹き飛ぶスタースクリーム。起き上がったブローンの視線の先には愛用の銃を構えたオプティマスプライムの姿があった。
「もう二度と・・・私の部下の命を奪わせはしない!」
「司令官!すみません、助かりました。」
ブローンが申し訳なさそうにオプティマスに近づく。
「あの時お前を助けられなかった心残りをようやく晴らせたよ・・・。」
オプティマスがブローンの肩に手をやり微笑む。だがその時…空気が渦を巻き異常なエネルギーの反応が起きる。二人が目を向けるとそこには「SARA」を握りしめたスタースクリームの姿、そしてその背後には・・・。
「ディ…ディメンションゲート!」
しまったとばかりに駆け出すオプティマス。
「お前らごときと遊んでいられるかよ・・・俺様は時空界の支配者なんだ。さあ「SARA」、俺様を時空移動させろ・・・。」
「SARA」は意識を失ったままであったが、その体は発光し、時空移動の力をスタースクリームの手によって強制的に行使させられているようであった。そのままディメンションゲートへと吸い込まれて行くスタースクリーム。
「まて!「SARA」を返せ!」
「ダメです司令官!もうゲートが閉じ始めている!今飛び込んだらバラバラになってしまいますよ!今あなたを失うわけにはいきません!」
わが身を省みず飛び込もうとするオプティマスをブローンが必死に止める。
「じゃあな・・・次に会う時は俺様が全時空界の覇者となった時だ。もっともその前にクラウド世界ごとてめえら全員くたばってるかもしれないがなあ!」
時空の彼方へ消えて行くスタースクリーム、その勝ち誇った笑い声だけがその場に響き、やがて静寂が訪れた。

「奴の飛んで行った世界ならわかりますよ。」
ここはオートボット守備隊基地、時空移動したスタースクリームを追う術はあの場では無く、いったんオプティマス達は基地へと戻ってきていた。
「俺の体には「SARA」の一部と言えるエネルギーが宿っている、それが「SARA」の居場所を感じさせているんだ、例え別の時空であっても…俺自身も不思議な感覚ですがね。」
ブローンがモニターを指差しながら周囲のオートボット達に話す。
「奴が向かったのはここ・・・第15MD時空だ。」
「第15MD時空…スタースクリームが選んだのか、それとも「SARA」がなんらかの理由でそこへ飛ぶようにしむけたのか…どちらにせよほうっておくわけにはいかない・・・しかし・・・ 」
オプティマスが言葉を濁らせた、「SARA」無き今オートボット達に時空を越える術はないのだ。
「・・・一つだけ方法があります。」
覚悟を決めた顔で提案するラチェット、一同の注目が集まる。
「時空移動施設を動かすエネルギー・・・「SARA」無き今それが確保できないことがネックです。ですが、現在クラウド世界を維持し崩壊の時を延ばしている緊急エネルギー、これを利用すれば少人数なら時空移動が可能なはず・・・!」
「ラチェット!だがそれを使ってしまっては、この世界はもう一日と持たないかもしれんぞ!」
オプティマスが驚いて声をあげる、だがラチェットは毅然として答える。
「「SARA」無くしては遅かれ早かれ滅びは止められません、それでしたら司令官、私は今一度あなたにこの世界と我々の命運を託します!」
周囲のオートボット戦士達も無言でうなずく、皆同じ気持ちであった。
「わかった・・・今度こそ、必ず「SARA」を取り戻しクラウド世界を救ってみせる!オートボット総司令官の名にかけて・・・!」
「今度は置いていかないでくださいよ司令官、まだ俺はスタースクリームの奴に借りを返してないんだ。」
ブローンが意気揚々と前に出て手を差し出す、オプティマスはその手を強く握りしめた。
「ああ、頼りにしているぞ。共に行こうブローン。」

数刻後、オプティマスプライムとブローンの前にディメンションゲートが開放される。それはクラウド世界全ての最後の希望となる扉。皆の期待と願いを背負い、二人の戦士は時空を越える。それを見守るラチェットは祈るような気持ちでつぶやいた。
「どうか無事にご帰還ください、司令官・・・。全ての希望、「SARA」と共に!」

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