TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 襲 撃 ー

第二話「襲撃」

Illustrated by HIDETSUGU YOSHIOKA
Story by makoto wakabayashi

先ほどまで第24BW時空で余剰エネルギーの採取をしていたホットロディマスがオートボット作戦本部に帰還してきた。

「ふぅ〜。第24BW時空よりただいま帰還しました。」
その若いトランスフォーマーはオーバーアピール気味に大きな声で報告した。
自慢の真紅のボティと胸部を奔るファイアーパターン。見た目が派手なだけではない、メトロポリス一の命知らずとしても知られている。彼の名はホットロディマス。オートボットの若き戦士である彼は第24BW時空から戻ってきて作戦本部にある自分のデスクに座り一息ついた。余剰エネルギー採取に手間取ったのかホットロディマスは疲れた様子がにじみ出ていた。
「第24BW時空での余剰エネルギーの採取、御苦労だったホットロディマス。随分時間がかかったな。なにかあったのか?」
ホットロディマスの疲れを察して、オプティマスが労いの言葉をかけエネルギー採取の遅れについて報告を求めた。
「いや、最初は順調に余剰エネルギーを採取していたのですが、急に時空の乱れが発生してエネルギー採取どころではなかったんですよ。しかしご心配なく。なんとか時空の乱れも抑えてきたので問題ありません。司令官。」
ホットロディマスは大きく体を伸ばし軽いストレッチを始める。
「しっかし、いつもいつも余剰エネルギーの採取に追われて、クラウド世界の安定を図るのも楽ではないですね。司令官」
オプティマスは笑いながらホットロディマスに話しかける。
「そうだな。だが我々が管理している「SARA」には膨大なエネルギーが必要なのだ。エネルギーの供給が不足してしまうと我々の世界や無数にある時空に多大な影響が出てしまう。そのため余剰エネルギー採取は必要不可欠なのだ。」
その時、凄まじい爆発音と地面の揺れが2人の会話を遮った。けたたましい警報がオートボット本部全体に鳴り響く。
「!」
オプティマスは無数にあるモニターを見渡しながらオートボット達に報告を求める。
「何だ?この警報は?!」
作戦本部にいたラチェットが呼ぶ。
「オプティマス司令!第3地区のゲートが破壊された模様です!市街地が攻撃を受けております!」
「な、なんだと!?」
長年、平和と安定を享受していたメトロポリス内での破壊行為の報告にオプティマスは一瞬、我が耳を疑った。
「ラチェット!第3地区の詳しい情報がほしい!被害状況を報告してくれ。」
「今情報を収集しております!ちょっとお待ちください。」
ラチェットの腕はオプティマスのオーダーを聞く前から適切にコンソールの上を走っていた。
「オプティマス司令!詳細がわかりました。第3地区のゲートが空からの爆撃で突如破壊され、市街地にアンノウンの侵入者が複数確認された模様です!!」
オプティマスは確認をする。
「な、なんだって・・・?事故では無く侵入者からの攻撃だと!?第3地区の被害状況は?」
ラチェットは眉間にしわを寄せ、唇をかみしめながら声にならない声でオプティマスに報告をする。
「第3地区は・・・、壊滅状態です・・・。」
オプティマスは機能停止になるのではないかと思える程の衝撃を受ける。
だが彼の思考サーキットは、止まる事なく正常に機能していた。
「か、壊滅とは…。侵入者の確認を急げ!!」
オプティマスの命令にそれまで沈黙していたホットロディマスが怒りを込めて拳を壁に叩きつける!
「くそっ・・・!!」
ホットロディマスの悪態に応えるかの様にラチェットが侵入者に関する続報を報じた。
「監視カメラが侵入者を捉えました!モニターに映します!!」
作戦本部のメインモニターにオートボット達をあざ笑うかのような態度の、一体のトランスフォーマーが映し出される。
「スタースクリーム様の参上だ!これでもくらえっ!!」
スタースクリームと名乗ったトランスフォーマーは街の破壊を続けていた。その最悪の状況をモニターで見ながらラチェットは困惑した表情でつぶやく・・・。
「スタースクリームだと・・・?」
「な、なぜ奴らがここに・・・?アンダーグラウンドにいるはずでは・・・。」
オプティマスはデスクに両手をつき、頭を下げながら小声でつぶやいた。
オプティマスはその侵入者達に心当たりがあったのだ。
攻撃されている市街地の映像を見て、ホットロディマスは居ても立っても居られずオプティマスに助けにいくよう進言をする。
「このままでは奴らの思うつぼです!奴らを止めに行きましょう!!オプティマー・・・!」
再び警報が鳴り響きホットロディマスの会話を遮った。
各地区の状況をチェックしていたラチェットが驚いた表情で立ち上がる。
「だ、第7地区にも新たな侵入者が!!」
オプティマスは顔を上げ、再びスクリーンを直視する。
「な、なに!?このタイミングで・・・!?」
ラチェットが第7地区の状況をオプティマスに報告する。
「現在、市街地を巡回中だったブローンが応戦中ですが、敵の数が多く救援を求めています!」
オプティマスが救援を向かわせる指示を出そうとしたその瞬間、新たな警報が次々と鳴り響いた。
「今度は第6・8・13地区が襲撃されております!!」
次々と別地区が攻撃されている状況で、オプティマスは冷静に対処するため戦況の分析と敵の正体について考えていた。
「くそっ!どうなってるんだ!?」
ホットロディマスはイスを蹴り飛ばし、怒りに満ちた表情でモニターを見上げた。
「落ち着くんだ、ホットロディマス!どうやら今回の攻撃は綿密に練られた作戦のようだ・・・。戦力を分散させ我々の指揮を乱そうとしている。」
オプティマスはホットロディマスを宥めながらも、アンダーグラウンドにいるはずの一人のトランスフォーマーの事を思い浮かべていた。
オプティマスは決断する。
「今は悩んでいても仕方がない、我々も部隊を分け応戦する!!!」
オプティマスはラチェットに指示を出す。
「ラチェット!各地区に配置されているオートボット戦士達に至急通信を入れ、攻撃を受けている地区の防衛と侵入者の撃退に向かうよう指示を出してくれ!」
「わかりました!オプティマス司令!!」
更にオプティマスはモニターを歯がゆい表情で見ているホットロディマスにも指示を出す。
「さぁ、お前も攻撃を受けている地区に向かい侵入者からメトロポリスを守るんだ!ホットロディマス!」
オプティマスの声には、若き戦士に対しての期待の念が込められている。
「わかりました司令官。奴らめ!今行くぞ!!」
ホットロディマスは気持ちを切り替え、先ほどまでの疲れを忘れたかのように走り出し車にトランスフォームして作戦本部を後にした。
オプティマスは彼の後姿を見ながら、残りの攻撃を受けている地区にもオートボット達を向かわせるよう指示を出した。そして自らも戦いに参戦すべく武器の準備を始める。
そんな時、モニターに映る銀色の戦車がオプティマスの目に留まった。
「ラチェット。第13地区の状況をメインモニターに映してくれ。」
「わかりました、オプティマス司令。」
映し出された映像には銀色で巨大な砲身を携え、重厚な装甲の戦車が単独で街を破壊していた。
「この巨大な戦車は・・・?」
オプティマスはその戦車から発せられる強いオーラの様なプレッシャーを感じ取っていた。
オプティマスは急ぎ、ラチェットにある人物の反応を調べさせた。
「ラチェット!メトロポリスを追放された者達は、犯罪者登録として個体エネルギー信号を記録されているはずだ!メモリーバンクから政治犯X-86の反応を探してくれ。」
「了解しました。司令官!」
ラチェットは膨大な過去のデータの中から「政治犯X-86」についての情報を検索した。
「オプティマス司令官。「政治犯X-86」の情報がヒットしました。表示します!!」
スクリーンに映し出されたのは、「政治犯X-86」のエネルギー信号の種類や能力値、武器の種類など彼に関わるありとあらゆる情報が表示された。
「モニターの戦車と、X-86の個体認識データが一致します。ヤツはいったい…。」
ラチェットの問いに、オプティマスは怒りを込めて呼んだ。
「やはり貴様の仕業だったか、「政治犯X-86」!!…アンダーグラウンドの荒くれどもを纏められる奴など、そうそういないからな!!」

オプティマスは愛用の銃を手に取り、作戦本部を後にする。
「待っていろ!「政治犯X-86」!いや、メガトロン!!
クラウド世界やこの宇宙すべての時空の住民の平和を守るため私は戦う!!
我々の心は恐怖と暴力だけでは支配できないことを改めて教えてやろう!!」

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