TRANSFORMERES Cloud , 時空界

ー 決 起 ー

第一話「決起」

Illustrated by HIDETSUGU YOSHIOKA
Story by makoto wakabayashi

メトロポリス内にある時空警察オートボット本部、各時空を観察するモニター室にて、リーダーシップを取りオートボットに指示を出す一人のトランスフォーマーがいた。大柄で頑丈、正に偉丈夫とでも言うべき体格であった。一見、厳めしいものの、その蒼く光る目からは力強さとともに一種の優しさも感じられた。彼の名はオプティマス・プライム、オートボットの総司令官である。
「どうだ、ホイルジャック。時空は安定しているかね。」
「オプティマス司令官」
オートボット本部にて時空の観察をする白いボディを持つロボット、ホイルジャックが困った顔をしながら首を横に振り、振り向く。
「良い報告をしたいのはやまやまなんですがね司令官。残念ながら第33HM時空にて乱れがおきてますな。」
目と耳を光らせしゃべる彼の言葉は、いつも少々楽観的に聞こえる。
オプティマスが目を細め近寄る。
「乱れの程度はどうだ?」
「今はまだ微量…じゃが我輩の計算では後々大きくなる危険はありますな。」
「そうか、まだそれほどひどくはなさそうだが、なるべく早く誰かを向かわせる必要がありそうだ…。バンブルビーを現地に向かわせるよう通信を入れてくれアイアンハイド!!」
モニターに向かうもう一人のトランスフォーマー、アイアンハイドが第33HM時空の情報を収集しつつ答えた。
「了解しました。至急バンブルビーを現地に向かわせます。」
力強い返事から彼の強い意志と行動力を感じられる事にオプティマスは満足していた。
オプティマスは手元のモニターを見て、ホットロディマスからの完了報告がないことに気付く。
「第24BW時空にいるホットロディマスから通信はないのか?」
「まだありません。通信を入れますか?」
「余剰エネルギーの採取が遅れている。出来れば急ぐよう通信を入れておいてくれ。」
アイアンハイドは自信に満ちた顔で、後ろにいるオプティマスに振り向く。
「わかりました。苦戦しているようならこの私が乗り込んで助けにいってやってもいいんだぞと伝えてやりますよ!」
オプティマスはアイアンハイドがホットロディマスのいる時空に乗り込んでいく姿を想像してほくそ笑んでいた。
「住人の生活は他時空の余剰エネルギーによって支えられている。我々が豊かな生活をすることが出来るのは、時空エネルギーを齎すディメンジョンゲート、そして何より『SARA』があって成り立つことだ。全てのセクターにエネルギーが行き渡らないようなことは決してあってはならない。二人とも引き続き監視を頼むぞ!ホイルジャック、アイアンハイド。」
力強いオプティマスの言葉にホイルジャックとアイアンハイドは立ち上がり、息を合わせてハモる様にオプティマスに返事をした。
「了解しました!」
時空警察オートボット達の任務は、他時空にある余剰エネルギーを滞りなく採取出来るよう、それぞれの時空を観察・管理することで平和な生活を維持することである。しかしオプティマスには一抹の不安があった。平和なメトロポリスの裏側で暗躍した一人のトランスフォーマーの姿を思い出していた…。

クラウド世界には、メトロポリス以外に暴力と無秩序が支配する荒廃した地下世界「アンダーグラウンド」があった。そこにはメトロポリスを追放された無法者たちが、ディメンジョンゲートや『SARA』の恩恵を受けられず、時空間移動も禁止されていた。エネルギーも枯渇し日々の生活すらままならぬ状況であったが一人のトランスフォーマーによって状況が一変するのであった…
そのトランスフォーマーはアンダーグラウンド中心部に位置する大広場で、今までにない規模での組織だった集会を開いていた。そこにいるトランスフォーマーは、無数の戦いで傷ついた銀のアーマーを纏い、背中に携えた重々しい刀を持っていた。にじみ出る覇気から、一目で彼が只者ではないことが分かる。
暗闇の先、観衆が一点を見つめている。鋭い眼光が浮かび上がり同時に大音声が響き渡る。

「アンダーグラウンドの同志達よ。」
大広場に集まっていた多種多様な荒くれ者達が一度に静まる。大広場にいる全員の注目が、檀上の一人のトランスフォーマーに向けられる。
彼は目の前に群がる観衆を一睨みすると、空を指差し再び声を上げ始めた。
「地上のメトロポリスに住む者達はディメンジョンゲートそして『SARA』の力を借り、他時空のエネルギーを大量に集めている。そしてそれを糧になに不自由ない、豊かな生活を送っている」
長い沈黙。檀上のトランスフォーマーは、観衆をじっくりと見渡す。その中には裏の世界に足を踏み込んだものならば、知らない者はいない影の大物達もいた。
「しかしそれに比べ、我々はどうだ…?我々は時空を超えることも許されず、その恩恵を受けることもなく、荒廃しきったこのアンダーグラウンドに追いやられているのだ!」
彼は一度大きく息を吸い込み、怒りに震える拳を振り上げ、叫ぶ。
「この不平等!!この理不尽!!何とするか!?
このまま沈黙し、目を背け、荒野に果てるのが貴様らの望みか!?」
アンダーグラウンドにいるトランスフォーマー達に呼び掛けながら演説が徐々に加速する。
「否!!今こそ決起の時である!力を持つ者こそが真の支配者たることをメトロポリスにいる奴らに思い知らせてやるのだ!!」
「オオオォオオオオオォォォォ!!!!」
雲霞のごとく集まった観衆から血が揺れるほどの歓声と怒号が轟く。アンダーグラウンドの無法者達が、初めて一つの思いを共有していた。
「相変わらずのカリスマ性ですな〜、メガトロン様」
背後に控えていたスタースクリームが媚びるように賞賛の声をかける。
「ふん!貴様の世辞など聞きたくない。少しは下心を隠したらどうだ?」
メガトロンは冷ややかにスタースクリームを一暼すると再び観衆に目を向けた。
「火種は始めからあったのだ。私は油を注いだだけに過ぎぬ。
この時を…。メトロポリスを落とすこのチャンスを…。どれほど待ちわびたことか…!」
不敵な笑みを浮かべながらそう呟くと、メガトロンは最後の仕上げとばかりに再び拳を振り上げ叫んだ。
「さぁ行くぞ!目指すはメトロポリス!!栄光を我らの手に!!!」
「ディセプティコン軍団…トランスフォーム!!!!」

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